勘定合って銭足らず~黒字倒産の原因~
利益が出ているのに資金が足りなくなることは「勘定合って銭足らず」と呼ばれます。この結果、倒産に至ってしまうのが「黒字倒産」です。
なぜこのようなことが起きるのでしょう。
ここでは、設備投資を例に説明したいと思います。例えば、X社の税引前利益が1,000万円であったとしましょう。税金はこの利益に対して実効税率40%を掛けて400万円とします。この税金400万円を1,000万円の利益から支払います。
ところが、X社は6,000万円の設備を借金で購入していました。借入金は5年返済とすると年間の返済額は1,200万円です。しかし、税引前当期利益1,000万円から、借入金の返済1,200万円を支払うことができませんし、税金400万円の支払いもできません。
さらに詳しく見ます。X社の税引前利益1,000万円は、設備の減価償却費を控除した後の金額です。年間の減価償却費は500万円であったとします。減価償却費は計算上の数値なので、現金を支払った訳ではありません。減価償却費は、費用ではありますが資金の支出はありません。従って、X社は税引前利益1,000万円と減価償却費の500万円をプラスした1,500万円の資金が生まれていたことになります。ここから400万円の税金を支払うと残額は1,100万円となり、やはり1,200万円の借入金返済はできません。
このように、会計上の利益と資金の出入り(キャッシュフロー)は違います。そのために、黒字倒産といった事態が生じます。設備投資をするときには、投資から生まれる現金の入り(税引後利益+減価償却額)と借入返済額の支払いを考慮することが必要になります。
《 堀川 一 / 中小企業診断士 》