社労士から見た財務の基礎知識 4

 専門相談業務を始めてから相談が多いのは、起業後の事業計画や社会保険・労働保険の手続きについての相談です。起業前にまず考えたいのは、3年後、5年後のビジョンです。創業時にはどうしても設備や事業を行う環境を整える上での費用が発生します。創業時の赤字計上はある程度は仕方がないものになります。3年程度で創業赤字を解消し、事業拡大を徐々に図っていくのが理想的です。

 キャッシュフローと営業利益は一致しないことにも気をつけましょう。営業利益は減価償却費を計上した後での利益ではあるものの、売掛金による売上の利益も含まれます。売上は増加して利益は出ても、実は現金がないなんてことはよくあります。従業員の賃金は、現金で直接一定期日に全額を毎月一回以上支払うことが労働基準法で定められており、つまり、現金が無くても「まったなし」ということになります。

 事業計画作成にあたって、売上増加や利益計上だけではなく、設備導入による実質長期借入金をキャッシュフローから償還できるかどうかも、資金繰りや返済能力を考える上で非常に重要になりますので気を付けましょう。

《 加治 直樹 / 特定社会保険労務士 》