人事権の行使

優秀な従業員には課長や部長などの役職を与えますし、反対に剥奪することもあります。

また、職務内容は変えずに職能資格や等級を見直し、結果として賃金に反映させ昇給させる場合がありますし、これもまた反対の措置をとることもあるでしょう。

ここで気を付けたいのは、これらの人事権の行使が使用者の裁量権の範囲内なのかどうかという点です。

多くの裁判例では、前者の役職の付与・剥奪については、使用者に広範な裁量権があるとしています。誰を課長にして誰を部長にするかは使用者の専権事項であるというわけです。

ところが、後者については、職階制と賃金体系がリンクされているため労働条件を構成していることになり、特にその引き下げについては明白でなければなりません。

 裁判例では、職能資格等の引き下げには就業規則に使用者の権限の明確な根拠と相当な理由が必要であるとしています。

就業規則にそのような根拠規定がない場合には盛り込むことをお勧めしますが、不利益変更の問題がありますので、丁寧な対応が必要となってきます。

《 馬場 一成 / 特定社会保険労務士 》