コロナの影響による解雇や雇止めの増加

新型コロナウイルスの影響もあって、「解雇」や「雇止め」に関する相談を受けることが多くなりました。「解雇」に関する注意すべきポイントや基本的な事項を今一度見直しましょう。

解雇に関して最初に注意すべきポイントは労働契約法です。解雇のトラブルは、従業員退職後に発生するケースが多いです。けっして解雇をしてはいけないわけではありませんが、労働者が納得できる説明もなく会社が一方的に解雇をしたら、労働者はどう思うでしょうか。退職後に解雇無効を主張してくることがあれば、企業は訴訟リスクを抱えることになります。この手の労使トラブルの話は従業員の間であっという間に広がり、「うちの会社はこんな辞めさせ方するんだ。」と幻滅して、他の従業員まで転職してしまうという話も耳にします。

解雇が有効なのは、労働者に改善の余地が無いなど限られたケースに限定されます。「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない」場合は、解雇は権利を濫用したものとして無効となります(労働契約法16条)。パートや契約社員など有期労働契約を結んでいる場合、「使用者は、やむを得ない事由がある」場合でなければ、契約期間が満了まで労働者を解雇することができません(労働契約法17条)。「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」「やむを得ない事由」の判断は、使用者と労働者の立場の違いから、当然、主張も食い違います。処分の公平性、就業規則の解雇事由に該当するかどうか、解雇の正当な理由、処分が重た過ぎないかをよく検討し、従業員の改善の余地、転勤や配置転換による対応など、解雇回避努力を尽くす必要があります。民事上のトラブルは、話し合いで解決できないと訴訟リスクに発展してしまうため、労使双方にとって話し合いで解決できるのが一番なのです。

労働基準法20条で「30日前の予告」や「解雇予告手当」の定めがありますが、これはあくまでも解雇することが決定してからの手続の話し。解雇予告手当を払っても、不当な解雇は当然無効です。また、産前産後休業や業務上のケガや病気による休業期間などの解雇制限、各種ハラスメント防止の措置義務や不利益取り扱いの禁止、育児休業・介護休業を利用したことを理由とした解雇の禁止など、様々な法律で解雇禁止事項が定められています。

最初に検討すべきは、労働契約法や民法などの法的根拠と客観的合理的な理由です。そして、解雇する理由が、法律上解雇禁止事項に該当するかどうかを調べる必要があります。労働契約法など民事的な部分や解雇禁止事項に該当しないかをよく検討し、「それでもやむを得ず解雇をするしかない」と判断した場合に、最終手段としておこなうものと考えましょう。

《 加治 直樹 / 特定社会保険労務士 》