働き方改革で人手不足!有期雇用契約のトラブル

新型コロナウイルスの影響で失業者の増加が問題となっていますが、実際には人手不足で悩んでいる企業がたくさんあります。特に中小企業では、一定のスキルや資格を持った人ではないとできない仕事が多く、コロナ不況の今でも社員の採用に苦労しているのが実情です。設備工事の会社は現場作業が無くならず、飲食店は持ち帰りの新メニュー・ネット販売へ取り組みと新たな営業体制の構築などで、なかなか休業ができません。介護・医療関係では、看護師や歯科衛生士、理学療法士、介護福祉士などの有資格者が不足し、事業拡大ができないと悩んでいます。IT関連中心に便利になる一方、中小企業の経営者の最大の悩みはやはり、「ヒトとお金」ということでしょう。

実際に労働者からの相談でこのようなことがありました。

求人に応募し、面接では正社員採用との説明があって就職した女性です。入社後、労働条件は期間1年の有期雇用契約になっているので会社に問い合わせたところ、1年で正社員にするような回答があったそうです。その後、面接時の説明より基本給が少ないこと、ボーナスが支給されないなどが原因で会社に不信感が芽生え、上司との関係も悪くなり解雇騒ぎに。解雇予告後、なぜか会社は労働者の自己都合退職を主張してきたため、労働基準監督署へ申告後、労働局の口頭助言やあっせんを申請。会社不参加により、最終的には労働審判となり、200万円程度の解決金で和解したそうです。その間、労働者があらゆる行政機関に相談していたため、会社はその対応で業務ができない状態でした。

労働契約法16条では、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、権利の濫用として無効と定めています。また、労働契約法17条では、期間の定めのある労働契約では、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間満了まで労働者を解雇することができないと定めています。面接時の説明と異なる労働条件や労働者が話合いを求めても参加しない会社の対応に誠意が感じられないなど、会社の合理性のない主張は認められず、契約期間満了までの賃金と慰謝料相当額で和解したようです。会社にとって和解金額は些少でも、解決するまでの間、業務に大きな支障が発生し、大きな損失となっています。

人手不足の時代、従業員採用時には、職種・業務内容にあった労働条件で採用することが大切です。「ヒトとお金」の悩みは、事業を経営する上で尽きることはありません。

「ヒトとお金」に関する経営上の悩みは、企業経営に理解のある専門家がいるネリサポで、是非相談して下さい。              

《 加治 直樹 / 特定社会保険労務士 》