“廃業”という選択

事業の将来性がないという理由のほか後継ぎがいないなどの理由で、長い間続けてきた会社やお店を閉じざるを得ないケースが最近増えています。事業を止める前に、会社を買ってくれるところはないか、誰か事業を引き受けてくれる人はいないか、また新しい事業展開を図ることで復活できないかなど様々な可能性を探ることは非常に重要なことですが、最終的に廃業を選択せざるを得ないケースも実際には多くなっています。

ただ、廃業を「終わり」と捉えるのではなく、事業者ご本人はもちろんですが、ご家族、従業員などにとってむしろ新たなる道への“再出発”と前向きに捉えてみませんか。

そのためには、廃業を決めたら、事務上の廃業手続きのみならず心おきなくスムーズに再出発を図れるよう次の点に注意を払いましょう。

(1)ご家族の協力と理解

   特に中小・小規模事業者の場合、直接間接にかかわらずご家族が事業に関わっていることが多いので、早めに事情を話し、廃業後の新たな一歩への協力をお願いする。

(2)従業員への対応

   従業員を雇っている場合は、「再就職先の紹介やあっせん」「独立する場合の技術の伝授などの援助」「退職金の支払い」など従業員の処遇についてしっかりと配慮する。

(3)取引先への対応

   取引先が支障をきたさないよう早めに伝えて、代替先をあっせんしたりするとともに、売掛金を確実に回収する。一方、仕入れ先には買掛金の返済を滞りなく進める。

(4)金融機関への対応

  借入金は、廃業までの間に返済して抵当権を解除する。

(5)専門家への相談

   問題が起きそうな場合は、必要に応じて税務関係、労務関係、法律などの専門家に相談する。

《 前田 通孝 / 中小企業診断士 》