手形・小切手の廃止

現在、政府・産業界・金融界が一体となって、2026年までに「紙の手形・小切手をなくし、全面電子化する」取組みを進めています。背景は大きく2つあります。

1つ目は事業者の資金繰り改善です。約束手形は現金化されるまで60~120日程度要することもあり、立場の弱い受注企業の資金繰りに与える影響も大きいです。インターネットバンキング等による振込になることが受注企業にとって最善ですが、少なくとも「電子記録債権」による支払いに移行するよう働きかけを行っています。「電子記録債権」の場合、分割譲渡や分割割引等、紙の手形に比べて資金繰り対策がし易いからです。2つ目は決済手段の電子化により、社会全体の効率化を図るためです。紙の手形・小切手を取扱う場合、発行側・受注側・金融機関に大きな事務負担が発生します。電子化により、事務負担を少なくし、効率化していくことが社会全体にとっても相応しいと考えられます。

政府・産業界・金融界での取組みの結果、手形小切手交換枚数は2020年→2022年にかけて約27%減少しています(※)。一方で、毎年の削減目標は下回っている状況です。なお、約束手形から電子記録債権への移行が進まない理由の1つにインターネットバンキングの契約が必須であることが挙げられます(月間手数料がネック)。全国銀行協会ではこれに対応すべく、2024年中にインターネットバンキングの契約を必要としない、「新たなチャネル」の提供を目指しており、今後の動向に注目です(手数料等詳細は現時点では不明)。

※第10回「手形・小切手機能の『全面的な電子化』に関する検討会」資料(2023年3月23日 一般社団法人全国銀行協会)より

《 森川 泰裕 / 中小企業診断士 》