「事業承継に際して求められる4つの観点」について
M&Aを含め親族外への事業承継を支援・サポートした事例が、この1~2年で10数件となりました。一件一件の事案ごとに実に様々な個別事情がありますが、承継の実務も含めますと、どの案件についても共通する4つの観点が必要となります。
第1は「財務」の観点です。企業経営の実態がどうなっているか、改めて冷静かつ客観的に見つめ直すことが大前提となります。
第2は「税務」の観点です。どういう取引の形態をとるか(例えば、対価を株式譲渡代金で受取るか、一部を退職金の形とするか)によって、企業を譲渡する側が負担する税金の額に大きな差が生じます。
第3は「法務」の観点です。会社法では会社分割や株式移転、自己株式、現物分配等々、様々なツールが用意されていますが、これらを適切に活用するかしないかで、要する費用や労力に大きな違いが生じます。
第4は「総務」の観点です。法人としての登記が必要になる場合には、定款の見直しや変更、株主総会議事録の作成が重要になります。
事業承継の具体化を検討するに際しては、この4つの観点から総合的に判断し、経験豊富なアドバイザーと検討を重ね、時間をかけて協議していくことが肝要です。そのためには、時間的に追い込まれる前の余裕のある時にこそ、キックオフして準備に取り掛かることが大切です。
《 宮川 雅行 / 中小企業診断士 》