社労士から見た財務の基礎知識 6
会社経営を考える上で重要なものの一つに「人件費」があります。固定費として経費の中で大きな比率を占めるわりには、意外と変動することを忘れがちで大きなリスクが秘められています。人件費の総額は給与の1.5倍から2倍以上に及ぶと言われます。
具体的な「人件費」に含まれる代表的な費用としては、以下のものがあげられます。
①給与(時間外手当や通勤費などの手当を含む)他雑給等
②賞与
③役員報酬・役員賞与
④福利厚生費(社会保険や労働保険の保険料等法定福利費や社員旅行等福利厚生費)
⑤退職金
給与以外にも会社が負担する法定福利費の他、賞与の支払いを考えると、毎年大きく変動する可能性があります。退職金支払いを考えると給与の2倍以上になることがうなずけます。
なお、工場の生産ラインや建設業の職人へ支払う労務費などは「製造原価」として計上され、営業部門や経理部門の従業員の人件費は「販売費及び一般管理費」に区分されます。
一度引き上げた給与を減額することは労働条件の不利益変更に該当する可能性もあり、また、未払いの時間外手当があると会社は大きな訴訟リスクを抱えることになります。
会社を経営する上で、経営者には人件費を適切に把握することが求められます。決算書や試算表により、売上だけではなく「人件費」についても、適宜把握するように努めましょう。
《 加治 直樹 / 特定社会保険労務士 》