副業・兼業規定の整備
コロナ禍においてテレワークが推奨され、テレワークを制度化した企業が増えましたが、副業・兼業についても解禁となった企業が増えたように思います。副業兼業にはルールがあるということはご存じでしたでしょうか。また、副業・兼業について、就業規則や社内ルールをきちんと整備されていますでしょうか。
就業規則に副業に関する記載が無い場合、労働者は自由に副業をすることができます。就業規則に記載がない以上、労働者が自由に副業を行っていたとしても、会社は禁止にすることはできません。つまり、副業に関する記載をしないままでいることは、会社にとってトラブルの種となる可能性を秘めていることになります。
副業規定においては副業禁止とはできませんが、だからと言ってどんな副業も可能というわけではありません。以下4つの内容のいずれかに該当し、副業として相応しくないものであると判断される場合は、会社としてその副業に関しては禁止としても問題とはなりません。
①労務提供上の支障がある場合
②労務上の秘密が漏洩する場合
③競業により自社の利益が害される場合
④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
ただし、これらの例に該当するという理由で副業自体を全面的に禁止にすることはできませんので注意しましょう。あくまでも、一つ一つの副業の内容を精査した上で、副業の可否を決定していくことが必要となります。副業は労働者の就業時間外でのプライベートな時間の使い方の一つです。会社に労働者のプライベートな時間の使い方を禁止することはできないということを念頭に置いておきましょう。
また副業のルール上、会社として副業をしている労働者の労働時間の管理が必要になってきます。
労働者が知らないうちに副業をしていた、ということの無いよう副業規定を整備し、副業する場合は申請や誓約書等を求め、労働者の副業状況を把握し、会社の規定に違反しないよう約束させるなど、トラブルを未然に防ぐための対応が必要となります。
副業については元々、2018年に働き方改革の流れを受け、副業解禁が推奨されるようになりました。コロナ禍で休業するなど、収入が減少することに直面した方が多くいる中で、副業に関心が向いたことがきっかけで、副業をする人が一気に増えました。ただ会社と労働者の間でトラブルが多くなったことも事実ですので、不要なトラブルのきっかけを作らないためにも、副業に関する就業規則・社内ルールを整備することが大事になってきます。
厚生労働省のサイトで、副業兼業の促進に関するガイドライン等を掲示しております。副業のモデル規定や、労働時間管理・通算等のルールについても記載されておりますので、ご参考までにご覧いただき、就業規則・社内ルールの整備を進めていただければと思います。
《 木皿 直己 / 社会保険労務士 》