社労士から見た財務の基礎知識 7
実際にあった話ですが、経営者からの相談で金融機関からリストラを示唆され、従業員を一人解雇したら「解雇無効で訴える。和解金を○○万円支払え」と請求されたということがありました。整理解雇としては一般的に、①人員整理の必要性②解雇回避の努力義務③被解雇者の人選の合理性④手続きの妥当性や説明義務などが重要視されるといわれます。裁判等で争うことになれば、権利の濫用として解雇無効の可能性があるのです。
通常金融機関は、従業員の給料引き下げや解雇は難しいので、リストラは最終手段と考え、役員報酬減額や改善計画の策定を求めてくることが多いと思われます。聞いたところ、業況低迷下で退職金以外の理由で人件費が不自然に増加し、営業利益、経常利益の赤字が増加、助成金や保険解約益による一過性の特別利益はあったが、保険解約による企業の体力面と人件費増加による将来の返済能力への不安から融資を打ち切るといった内容でした。
事業計画や改善計画は、過年度の財務内容から資金繰り上の問題点を把握し、問題点をピンポイントで改善するイメージで作成していきます。1年後、3年後、5年後の改善状況と事業継続の可能性を念頭に置き、資金繰り改善方法の具体的案を考えなければなりません。
取引先は優良な会社が多いにもかかわらず追加融資は断られ事業継続を断念、また、解雇した従業員からの訴訟リスクなども考えられます。
賃金上昇と人手不足の現在の情勢下で、中長期の経営ビジョンはやはり大切だと痛感しました。
《 加治 直樹 / 特定社会保険労務士 》