昔は残業100時間なんて当たり前?

過労死ラインについて、平成初期の頃までのいわゆる企業戦士だった方から「昔は100時間の残業なんて当たり前だった。」と聞くことがあります。たしかにその頃の時間外労働は100時間どころではなかったでしょうし、そもそも法定労働時間が現在より長時間でした。そんな時代をたくましく生き抜いた方にとって、100時間の残業で過労死することを想像するのは困難なのかもしれません。

では、いまの働き手は軟弱になったのでしょうか。私は違うと思っています。

たとえば、営業マンが訪問先で顧客から様々な要望や質問を受けますと、モバイル機器を駆使して、提案内容や見積を修正し、質問に回答し、基本的にはすべてその場で解決します。

以前なら「では、その件は修正して2~3日中に提示します。」こんな対応だったりしませんでしたか。そして「その件」が解決しないので商談を先に進めることもできず、以後は「付き合い」という名の仕事に切り替わり、「先日のゴルフでは・・・」などと世間話が始まるとか・・・。

極限まで無駄を省き客先でも移動中でも頭と手をフル稼働させる現在の働き方は、労働の密度が非常に濃くなっていますので、いま過労死ラインを超えることはとても危険なのです。

《 馬場 一成 / 特定社会保険労務士 》