有期雇用労働者への対応は今がピーク

期間の定めがある労働契約を締結している労働者を一般的に「有期雇用労働者」と呼びますが、有期雇用に関するトラブルの相談が多く寄せられています。経営者としては、「正社員よりもパートや契約社員を採用し、人件費を抑えたい」と考える方も多いでしょう。一方、労働者からみると「なぜ、半年や1年で更新をしなければならないのか?」と疑問に感じる方が多いのです。

「正社員募集と思っていたら、面接時の説明と違い期間の定めがある」「なぜか、フルタイムなのに無期で契約してくれない」という労働者の相談は多いです。これでは、企業の対応に不信感を抱き、有能な人材はすぐに退職してしまうでしょう。一方、会社は期間満了まで解雇することはできず、退職してもらおうと思っても、雇止め無効・解雇無効、無期転や同一労働同一賃金への対応、賃金の補償など様々なリスクが発生することになります。もちろん、従業員がすぐに退職してしまっては、それまでにかかった福利厚生や教育に費やした費用はすべて無駄となってしまいます。収益面を考えると、大きな痛手です。

労働契約法17条では、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」と定められています。「やむを得ない事由」の立証責任は使用者にあるともいわれ、解雇せざるを得ない特段の事情が無ければ解雇は難しく、労働契約法16条の解雇濫用法理よりも、更にハードルが高いともいわれているのです。

2020年4月に施行(中小企業は2021年4月)されたパートタイム・有期雇用労働法により、同一労働同一賃金への対応は今がピークで、多くの中小企業でパートタイム就業規則を作成・見直ししているところです。人材の有効活用の一手段として、同一労働同一賃金への対応は早めにおこないましょう。

《 加治 直樹 / 特定社会保険労務士 》