輸入企業における為替予約の効果

為替相場の変動は輸入企業に対して大きな影響を与えます。例えば以下のように為替が変動すると、得られる利益は想定よりも減少してしまいます。

為替変動の影響

資産運用ではないので為替で得をしたいと考える方は少ないでしょう。為替の変動によって利益が減ってしまったり、損が出てしまったりすることを避けたいと考える方が大部分だと思います。

為替変動リスクを回避するために使われる手段として為替予約があります。為替予約は将来の決済レートを今決める取引です(決済は将来・値決めは今)

上記の例で言えば「売る値段を決めるとき」に、将来 外貨で「輸入代金を支払うとき」の為替レート(先物レート)を決めるということです。これにより「売る値段を決めたとき」から「輸入代金を支払うとき」までに、為替レートが円安(輸入事業者にとって不利)に動いたとしても当初想定通りの利益を確保できます。
※逆に円高になっても、そのメリットを享受することはできない

為替予約の基本的な利用方法は上記のように「確定した仕入」に応じて予約を締結するという方法です。その他、経常的に一定額の外貨が必要という事業者の場合、個別の仕入とは紐付けずに、必要額の半分程度の外貨を計画的に予約していくという方法があります。

なおドルの場合、日本とアメリカの金利差(アメリカの金利>日本の金利)の影響で、先物レートは今時点の為替レート(実勢レート)より円高になっています。例えば、2024年7月2日時点の実勢レートは161.70円程度(注)です。一方、2024年7月2日時点で決める1年先の先物レートは8円 円高の153.70円程度(注)です。この点にメリットを感じて予約を締結する事業者もいます。

最後に留意点を記載します。

  • 為替予約取引は金融機関と行う。金融機関にとって為替予約は与信行為(融資と同じ)であるため、審査が必要となる
  • 締結した予約は取り消せない
  • 必ず必要になる金額の範囲内にする
    ※ドルが余る→購入レートよりも円高→不要なドルなので円に換える→損失が発生する

為替変動の影響を直接受ける(外貨で支払っている)事業者様においては、リスクも理解した上で利用を検討してみると良いでしょう。

注:Investing.com - 世界の金融市場(https://jp.investing.com/currencies/usd-jpy-forward-rates)より

《 森川 泰裕 / 中小企業診断士 》