購買意欲を高める『3.5回の法則』

今回は『3.5回の法則』と呼ばれるマーケティングの考え方についてお伝えします。

限られた予算で、いかに効果的に新規顧客を獲得し、既存顧客の購買意欲を高めるか。これは多くの中小企業が直面する大きなマーケティング課題ですよね。この法則を理解し実践することで、顧客との関係構築から売上獲得への転換がグッと楽になります。

『3.5回の法則』とは?

『3.5回の法則』
簡単に言うと、「顧客が購入を決意するまでに、平均して3.5回の接点が必要」という顧客獲得のための法則です。
この法則の起源は明確ではありませんが、長年のマーケティング実践から導き出された経験則だと言われています。

なぜ3.5回なのでしょうか?
これには消費者心理が関係しています。人間は通常、初めて見たり聞いたりしたものをすぐに信用したり、購入したりはしません。少し様子を見たり、情報を集めたりしてから決断を下すことになります。その過程で、およそ3~4回程度の接点があると、親近感や信頼感が生まれ、購買意欲が高まり、購入の決断をしやすくなるわけです。

ここで重要なのが「顧客接点」です。
顧客接点とは、文字通り顧客と接する機会のこと。昔は店舗に来てもらうか、セールスマンが訪問するくらいしか方法はありませんでしたが、デジタルの時代になって、顧客接点の種類がグッと増えました。ウェブサイトやSNS、メールマガジン、オンライン広告など、デジタルの接点が増え、実店舗や展示会、ダイレクトメールといったアナログな接点も依然として重要です。

これらデジタルとアナログの接点をうまく組み合わせることで、効果的に顧客との関係を構築し、購買意欲を高められます。特に中小企業の場合、大手企業に比べて機動力があります。この強みを活かして、顧客とのコミュニケーションを継続的に行うことが大切です。

『3.5回の法則』を活用した顧客接点戦略

では、具体的にどうやって『3.5回の法則』を活用すればいいのでしょうか?
ここからは、それぞれの接点でどんなアプローチができるか、中小企業向けのマーケティング戦略を詳しく見ていきましょう。

①初回接触と印象形成

最初の接点が肝心です。ここでいい印象を与えられるかどうかで、その後の顧客獲得の展開が大きく変わってきます。

オンラインの場合、多くの人にとって初めての接点はウェブサイトでしょう。そのため、中小企業のウェブサイトは見やすく、必要な情報がすぐに見つけられるようにしておくことが大切です。また、SNSや広告を通じて初めて接する人もいるでしょう。これらのチャネルでは、あなたの中小企業や商品の魅力を簡潔に、でもインパクトのある形で伝えることがポイントです。

オフラインでは、店舗や展示会が初めての接点になることが多いですね。ここでは、スタッフの接客態度や店舗・ブースの雰囲気が重要になってきます。また、既存顧客からの紹介で知るケースもあるでしょう。口コミは中小企業の顧客獲得の強力な武器になりますよ。

②信頼関係構築のための情報提供

初回の接触で興味を持ってもらえたら、次は信頼関係を築くステップです。ここで大切なのは、押し売りにならないこと。代わりに、有益な情報を提供することで、あなたの専門性や誠実さをアピールし、顧客の購買意欲を徐々に高めていきましょう。

これを実現する有効な方法の一つが、コンテンツマーケティングです。ブログやニュースレター、動画などで、顧客にとって価値のある情報を発信します。例えば、商品の使い方や業界のトレンド、お悩み解決のヒントなど、顧客の役に立つ情報を提供するんです。

このプロセスは「顧客教育」とも呼ばれます。顧客に知識を提供することで、あなたの中小企業の商品やサービスの価値を理解してもらいやすくなります。

③商品・サービスの紹介

信頼関係ができてきたら、いよいよ商品やサービスの紹介です。ただし、ここで気をつけたいのは、タイミングと方法。いきなり「これ買ってください!」と言っても、顧客の購買意欲は高まりません。

大切なのは、顧客のニーズに応じたカスタマイズ提案です。これまでの接点で得た情報を基に、その顧客が抱える課題や欲しいと思っているものを理解し、それに合わせた提案をします。

例えば、ウェブサイトの行動履歴から興味のある商品がわかれば、それに関連する情報やおすすめ商品を紹介するメールを送る。店舗での会話から顧客の好みがわかれば、次回来店時にそれに合わせた商品を用意しておく。顧客一人一人に合わせたアプローチが中小企業の顧客獲得には効果的です。

④購買意欲を高める限定オファー

ここまでくると、顧客の興味は高まっているはずです。あとは、その背中を優しく押してあげるだけです。

ここで使えるのが「urgency(緊急性)」と「scarcity(希少性)」という概念です。
「今だけ!」「限定50個!」といった言葉を目にしたことはないでしょうか?

こうした誘導をすることによって、今すぐ行動を起こさないと手に入らないかもしれない、という気持ちを喚起するんです。
また、これまでの接点で得た情報を基に、「〇〇さんだけの特別価格」といったパーソナライズされたオファーを出すのも効果的です。

各接点におけるコミュニケーション手法

次に、それぞれの接点でどのようなコミュニケーション手法が使えるでしょうか?

メールマガジン

メルマガは依然として強力なツールです。個人的なメッセージを届けられる上、コストも抑えられます。ただし、スパム扱いされないよう、内容には十分注意が必要です。昨今ではLINE公式アカウントからの一斉配信メッセージ/個別メッセージを活用するお店も増えてきています。

SNS

FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSを活用すれば、顧客との双方向のコミュニケーションが可能になります。ユーザーの反応を見ながら、リアルタイムで戦略を調整できるのが魅力ですね。

リターゲティング広告

一度あなたのサイトを訪れた人に、他のウェブサイトで再度広告を表示する手法です。認知度を高め、再訪問を促すのに役立ちます。

ダイレクトメール

従来型のダイレクトメールも、デジタル時代にあってなお有効です。特に、高齢者をターゲットにする場合や、商品の実物を送りたい場合などに威力を発揮します。

電話やビデオ通話

個人的で直接的なコミュニケーションが可能で、信頼関係構築に大きな効果があります。特に高額商品の販売や、BtoB取引では重要な役割を果たします。

これらの手法を適切に組み合わせることで、中小企業の顧客獲得と購買意欲の向上に大きな効果が期待できます。

まとめ

『3.5回の法則』の本質は、顧客との関係構築にあります。一回の接触で即座に販売に結びつけようとするのではなく、段階的にアプローチすることで、自然な流れで購買につなげていく。そんな考え方です。

大切なのは長期的な視点です。目先の売上だけでなく、顧客との長期的な関係性を築くことで、リピート購入や口コミによる新規顧客の獲得にもつながります。

また、この戦略は固定的なものではありません。顧客の反応を見ながら、常に改善を重ねていくことが大切です。時代とともに変化する顧客のニーズや行動を理解し、それに合わせて戦略を調整していく。そうすることで、より効果的なマーケティングが可能になるのです。

《 中小企業診断士 眞本崇之 》