フリーランス新法 影響と対応のポイント(フリーランス向け/委託事業者向け)
多様で柔軟な働き方が広がる中、フリーランスという働き方が注目されています。
しかし、フリーランスは企業との取引において不利な立場に置かれることが多く、報酬の未払いや契約条件の不明確さ、ハラスメントなどのトラブルが課題となっていました。
これらの問題を解決し、フリーランスが安心して働ける環境を整備するため、2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下、フリーランス新法)が施行されました。
フリーランス新法のポイント
フリーランス法では、以下のように『取引の適正化』と『就業環境の整備』に区分し、義務と禁止行為が定められています。
取引先の適正化 |
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✓ 取引条件の明示義務 |
✓ 期日における報酬支払義務 |
✓ 発注事業者の7つの禁止行為 |
就業環境の整備 |
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✓募集情報の的確表示義務 |
✓育児介護等と業務の両立に対する配慮義務 |
✓ハラスメント対策に係る体制整備義務 |
✓中途解除等の事前予告・理由開示義務 |
- 取引条件の明示義務
発注事業者(特定業務委託事業者※1および業務委託事業者※2)は、フリーランスに業務を委託する際、直ちに業務内容や報酬、委託日、履行期日、検収期日、支払期日などの条件を文書や電子データで明示する義務があります。
※1特定業務委託事業者=従業員を使用し業務を委託する事業者
※2業務委託事業者=従業員の有無を問わず業務を委託する事業者。業務委託事業者はフリーランスも 含まれるので注意。
- 期日における報酬支払義務
特定業務委託事業者は、物品やサービスを受け取った日から60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払わなければなりません。元委託者から再委託の場合、元委託者からの支払期日から30日以内のできる限り短い期間内に支払う必要があります。
- 発注事業者の7つの禁止行為
フリーランスに対する「受領拒否」、「報酬の減額」、「返品」、「買いたたき」、「購入・利用強制」、「不当な経済上の利益の提供要請」、「不当な給付内容の変更・やり直し」といった不当な取引を禁止します。
- 募集情報の的確表示義務
特定業務委託事業者は、募集情報を的確に表示するため、広告等によりフリーランスの募集を行う際には、正確かつ最新の内容の適切な情報を提供する義務があります。
- 育児・介護等と業務の両立に対する配慮義務
特定業務委託事業者は、フリーランスが育児や介護を理由に業務の調整を申し出た場合、可能な範囲で配慮し、配慮の内容の伝達・実施・理由の説明をしなければなりません。
- ハラスメント対策に係る体制整備義務
特定業務委託事業者は、フリーランスへのハラスメントを防ぐため、方針の明確化、体制の整備、迅速かつ適切な対応や防止策の周知、不利益な取扱い禁止を行う義務があります。
- 中途解除等の事前予告・理由開示義務
特定業務委託事業者が6か月以上の契約を解除する場合、30日前に予告し、例外事由に該当する場合を除いて、理由を開示する義務があります。
フリーランス新法は、フリーランスの労働環境を改善し、公正な取引を促進する重要な法律です。これにより、フリーランス市場の拡大や新たなビジネスチャンスの創出が期待されます。
委託事業者とフリーランスの双方が、この法律と個々の取引内容を理解し、適切に対応しましょう。
フリーランス向けフリーランス新法の影響と対応のポイント
フリーランス新法の影響
- 労働環境の改善:報酬の未払いや契約条件の不明確さ、ハラスメントなどの問題が減少し、安心して働ける環境が整備されます。
- 取引の透明性向上:業務内容や報酬、支払期日などの条件が文書や電子データで明示されるようになります。
- 中途解除に対する時間の確保と理由への対応:契約解除に備える時間が確保され、理由が示されることで対処が可能となります。
- 報酬の安定:60日以内の支払いが義務付けられ、報酬の支払期日が明確になります。
- ハラスメント防止による就業環境の向上:ハラスメント対策の体制整備と迅速かつ適切な対応が義務付けられ、就業環境が向上します。
- 育児・介護との両立:育児や介護を理由に業務の調整を申し出た場合、委託事業者は可能な範囲で配慮する義務があります。
- 労災保険への特別加入:仕事中や通勤中のケガや病気、死亡に対して補償が受けられます。
フリーランス新法の対応のポイント
- 取引条件・内容の確認:明示された条件をしっかり確認し、取引条件・内容で不明点があれば発注者に十分な確認をしましょう。
- 報酬の管理:支払期日を把握し、期日を過ぎても支払いがない場合は速やかに発注者に連絡しましょう。
- ハラスメント対応:ハラスメントを受けた場合は、相談窓口に相談し、適切な対応を求めましょう。
- 育児・介護との両立:育児や介護のために業務の調整が必要な場合は、早めに発注者に相談し、配慮を求めましょう。
- 労災保険への特別加入:加入は「事業または作業ごと」に「連合フリーランス労災保険センター」を通じて行います。リスクを考慮して加入を検討しましょう。
- 法令の理解:法令の内容を理解し、自身の権利を守るために必要な知識を身につけましょう。
委託事業者向けフリーランス新法の影響と対応のポイント
フリーランス新法の影響
- 契約管理の強化:委託事業者は、フリーランスとの契約内容を明確にし、適切に管理する必要があります。
- コンプライアンスの徹底:法令遵守を徹底し、社内の法務部門や従業員に対する教育を強化する必要があります。
- ハラスメント防止の実施:ハラスメントを防止するため、相談窓口の設置や防止策の周知を行う必要があります。
- 委託業務の適切な管理:過重労働や一方的な業務内容の変更を避けるため、取引条件、委託管理、スケジュール管理、進行管理などの体制を整備する必要があります。
フリーランス新法の対応のポイント
- 取引条件の確認:取引条件を明示する文書などを確認しましょう。なお、契約の名称や形式ではなく、契約内容や労働者性の有無を総合的に考慮することが重要なポイントです。
- 報酬の適時支払い:報酬の支払期日を守り、遅延なく支払う体制を整えるため、承認フローや支払い手続きの迅速化を図る仕組みを構築しましょう。
- ハラスメント防止策の実施:ハラスメント対策に関する体制を整備し、防止策の周知や教育、迅速かつ適切な対応を行いましょう。また、統一的なルールを確保するため、就業規則などに規定を盛り込みましょう。
- 業務の適正な発注管理:一方的な業務内容の変更を避けるため、管理体制の整備が必要です。具体的には、計画的な委託、変更要求の重要度や緊急度に応じた評価・承認、全体の流れのレビューを実施し、計画から委託、変更、完了までのプロセス全体を適切に管理しましょう。
- 法令遵守の徹底:法令に違反しないよう、定期的な教育や研修を行い、法令遵守を徹底しましょう。また、内部監査や外部専門家の活用などによる定期的な監視・評価も効果的です。これにより、問題の早期発見と迅速な対応が可能になります。
《 堅持 博 / 特定社会保険労務士・行政書士》
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