中小企業診断士が巡る、練馬の街 ~くるくる回そう!方向幕コレクション® ~(株式会社カエルパンダ)

〜原点回帰が⽣んだV字回復。練⾺発インディーゲームが鉄道ファンの⼼を掴むまで〜
今回は、鉄道ファンの間で話題のアプリ「くるくる回そう!⽅向幕コレクション」を開発した、株式会社カエルパンダ代表取締役・奥⽥覚さんをご紹介します。経営危機を契機に原点へ⽴ち返り、⾃社の強みに集中したことで業績はV字回復。独創的な発想と開発⼿法は鉄道・ゲーム両分野で注⽬を集めています。⼀⽅で、新規ビジネスチャレンジ補助金、⾒本市等出展費⽤補助⾦を活⽤しさらなる進化に挑んでいます。
店舗情報

株式会社カエルパンダ
代表取締役: 奥田 覚
業務内容:
・Nintendo Switch/PlayStarion/XBOXソフト、スマートフォンアプリの開発・販売
・玩具やグッズの開発、販売
・デザイン全般、ムービー等の業務請負
主な作品
・「幕コレ(⽅向幕コレクション)」
・「10秒⾛RETURNS」、「残⽉の鎖宮」ほか
住 所: 練⾺区豊⽟北1-10-2 ラフィーネ107
⽅向幕を回すだけ。それが、最⾼に楽しい。
Q1:「くるくる回そう!⽅向幕コレクション」(以下:幕コレ)とはどのようなものですか?
A1: ⼀⾔で申し上げますと、鉄道⾞両の正⾯や側⾯についている「⾏き先表⽰器(⽅向幕)」を、⾃分の⼿で思う存分くるくると回して楽しむだけの「⽅向幕シミュレーター」です。
池袋とかのターミナル駅で電⾞を待っている時、⾏き先表⽰が「回送」から「急⾏|飯能」などに回転して様々な種別や駅名が流れていくのを⾒たことがあると思います。「幕コレ」は、あれをNintendo Switchやスマートフォン上で機械ごと再現したものになります。実⾞から収録した、警笛やドア開閉などの⾳を鳴らす機能もあります。

■「幕コレ」紹介動画(外部サイトに移ります)
「電⾞でGO!」のような運転ゲームではありません。鉄道⾞両を⾛らせる要素は⼀切なく、ただひたすらに、好きな⾞両の幕を回し、好きな種別や⾏先に合わせる。そして、流れていく⽂字フォントやマークを眺めて楽しむ。いわば「デジタルのガジェット」「デジタルのインテリア」「ASMR(リラックス⾳声/映像コンテンツ)」といった類の作品です。⼿元でくるくる回したり、⼤型モニターに映してお酒を飲みながらぼーっと眺めたり、鉄道模型やプラレールなどの鉄道玩具と⼀緒に⾳を鳴らしながら楽しんだり、ユーザーの皆様それぞれの楽しみ⽅を⾒つけていただいています。
経営危機から⽣まれた、背⽔の⼀⼿。
Q2:「幕コレ」の開発するきっかけ、経緯は何ですか?
A2: 開発のきっかけは、会社の経営的な危機でした。 元々奥さんと2⼈でゲームの受託開発を中⼼に経営していたのですが、コロナ禍が明けた頃、パブリッシャーさんの戦略が変わって予定していた受託開発の仕事が⼀気に無くなっちゃいまして。コロナ禍に進めたプロジェクトでもかなりの借⾦を背負っていたこともあり、何としても稼がないといけない状況になってしまいました。そんな中「仕事がないなら、⾃分たちで売るものを作るしかない」と背⽔の陣で始めた取り組みの1つです。 「ゲームの開発ノウハウが活かせる」「確実に売れる⾒込みがある」「少⼈数で制作可能」、そして1回作って終わりではなく「持続可能なプロジェクト」という条件でネタを絞り込み、辿り着いたのが「NintendoSwitchで動く⽅向幕」でした。幼少期、⽗がお菓⼦の箱で⼿製の「⽅向幕」を作ってくれ、それを飽きずに回していた原体験も今回のプロジェクトの源泉の1つになっています。

そうして第1弾「近鉄奈良線」を発売してみたところ、想定していた何倍もの売上があり、「コレはいけそう」と即座にシリーズ化を決めました。実は第1弾を作っている時から「上⼿く⾏きそうだったら、すぐに次を出せるように」と並⾏して複数の鉄道会社さんへお声がけをして、仕込み⾃体は⾊々進めていました。
その中でも、早期に我々のコンセプトに共感し、「ノリノリ」でご対応いただいたのが、弊社の地元を⾛る⻄武鉄道さんです。ストックの⽅向幕ロールを18本も貸し出しいただいたうえ、⾞両基地などでの録⾳取材等にもご協力いただき、おかげで間髪⼊れず第2弾を発売できました。
コンセプト⽴案から開発・販売までほぼ⼀⼈。だから、ブレない。
Q3:苦労した点やこだわりの点があれば教えてください。

A3: わりと驚かれるのが、鉄道会社様とのライセンス交渉から、ゲームエンジンを使ったプログラム開発、デザイン、果てはプロモーションビデオの制作まで、ほぼ奥⽥ひとりでやっています。めちゃくちゃ⼤変ではあるのですが、全てのプロセスをひとりでやっているからこそ、コンセプトに余計なノイズが乗らないようコントロールでき、鉄道好きのユーザーさんにダイレクトにぶっ刺さるプロダクトにできているのではないかと⾃負しています。
あと、⽣成AIがこの数年で⼀気に進化したおかげで、プログラムのコーディングの7〜8割くらいは⽣成AIを活⽤しています。丸投げでなく、設計と要望をまとめてから⾃分の代わりにコードを書いてもらうみたいな使い⽅で、⽣成AIを2〜3⼈の優秀な部下として扱うイメージです。これがなかったらおそらく今のペースでのリリースは無理だったかと思います。(このインタビューもAIに添削してもらってます(笑))
こだわりについては、遊ぶのに邪魔になるような余分な機能はすべて排除していて、ゲーム機⽤コンテンツながら、ゲーム性はあえて排除しています。⼿に取った⼈がすぐに思ったように直感的に操作可能なユーザーインターフェース設計や、⼤量のデータを効率的に納めてやりくりすることでプレイヤーの体験を削ぐ無⽤な待ち時間を極⼒削減する⼯夫、そして商品のプロデュース⼿法は完全にゲーム制作のノウハウで⾏っています。
濃いファンのいるジャンルの商品なので、中途半端な理解や思い⼊れで作るとユーザーさんにそっぽを向かれかねず、なるべく題材となる路線や⾞両のファンのツボを含めて事前のリサーチはしっかりやって昇華するように⼼がけてます。コンテンツの性質上、世代交代で機器更新や引退の時期を迎えている⾞両を取り扱う事が多いのですが、鉄道会社の⽅々が本作の「現役のうちにアーカイブする」という制作⽅針に共感し、ものすごく協⼒してくださる事も多く、単なるビジネスを超えた、鉄道会社の⽅々の深い愛情にも⽀えられている部分も多分にあります。真似しやすいコンセプトでありながら、すぐに同コンセプトの商品を同じレベルで作るのは結構⼤変なのではないかと思います。
東京ゲームショウで異彩を放った“⾏き先表⽰”
Q4:この前、東京ゲームショウ2025会場でニコニコニュースのネット中継で⻑尺のインタビュー受けていましたね。
A4: ⼤変光栄なことに、多くの注⽬をいただきました。東京ゲームショウ(TGS)は世界的なゲームイベントですが、派⼿なアクションゲームや最新のグラフィックを競う作品が並ぶ中、弊社のブースだけひたすら「⾞両の⾏き先」が回っているという、ある意味場違いな(笑)光景だったのが逆に⽬⽴ったようです。というかその場違い感を狙っていました。想像以上に同業者さんから評価いただけたのも⼤きな収穫でした。ちなみにTGSへの出展についてもネリサポの補助⾦をフル活⽤させていただきました。

■東京ゲームショウ2025のニコニコニュース中継の様子
ニコニコニュースさんの中継では、レポーターの⽅へ「幕コレ」の紹介をしながら、商品の魅⼒について⻑時間語らせていただきました。視聴者の皆様からも「こだわり⽅が最⾼」「発想の勝利w」といった、ポジティブな反応を沢⼭いただき、⾮常に励みになりました。
また、⼈気イラストレーターの⻘⽊俊直先⽣にキャラクターデザインをお願いした、ナビゲーションキャラクター「巻川(まきかわ)くるり」をTGSのタイミングで発表しました。硬派なソフトに、⻘⽊先⽣の普遍的なかわいらしさのキャラクターが加わったことで、売り⽅のスタイルにバリエーションが出来たと思います。

■「幕コレ」ナビゲーションキャラクター”巻川くるり”
耐え、育て、広げる「幕コレ」シリーズの次なる挑戦。
Q5:「幕コレ」の今後の展開を教えてください。
A5: おかげさまで「幕コレ」シリーズは順調にラインナップを増やしています。ぶっちゃけ、2025年は「我慢のフェーズ」でした。 今、ゲーム市場はごく⼀部の超有名タイトルだけが⼤勝ちする構造になっていて、我々のような⼩さい会社が新規タイトルを出して⽣き残るのはめちゃくちゃ厳しいんです。 そんな中で「幕コレ」シリーズは、売上本数でいうと市場全体の上位10%には届いていませんが、おそらく20%くらいには⼊れているのではないかと推測しています。この厳しい市場の中で、かなり健闘している部類だと⾃負しています。ゲーム機をお持ちで無い⽅向けにスマートフォン⽤スピンオフシリーズ「幕コレMINI」をラインナップしました。2026年はここから⼀気に「跳躍する年」にしたいと考えています。

■スマートフォン用「幕コレ」MINIリリースのお知らせ
その第⼀歩として、2026年1⽉8⽇に⾸都圏の顔として活躍した⾞両を集めた第7弾『昭和/平成の中央線・⼭⼿線』を発売しました。(こちらも資料の収集などで、ネリサポの「新規ビジネスチャレンジ補助⾦」を活⽤しています) さらに、TGSをきっかけにお声がけいただき、2026年に向けて次世代機への対応、さらにはゲームコーナーや鉄道グッズコーナーの店頭に並ぶことで、より多くの⽅の⽬に触れる機会が増えると期待して「パッケージ版」も準備中です。

■「幕コレ」第7弾リリースのお知らせ
全国のファンの皆様、そして鉄道会社様にご協⼒いただきつつ、⼀つでも多くの⾞両や「幕」などをコンテンツ化していきたいです。発⾞標の商品化も検討しています。 練⾺発のインディーゲーム会社として、これからも地元の皆様に「何これ?!」「これは⾯⽩い!」と⾔っていただけるような作品をお届けしていきますので、ぜひご期待ください!
編集後記|中⼩企業診断⼠の視点から
株式会社カエルパンダさんの取り組みは、「規模が⼩さいからこそ選ぶべき戦い⽅」を⽰す好例です。受託開発に依存した事業構造が外部環境の変化で揺らぐ中、奥⽥⽒が選んだのは事業拡⼤や多⾓化ではなく、原点への回帰と強みへの集中でした。「売れる⾒込みがあるか」「少⼈数で回せるか」「継続できるか」という視点は、極めて実践的な経営判断です。
⽣成AI活⽤による業務効率化や限られた経営資源を最⼤限に⽣かす補助⾦活⽤の⼯夫も随所に⾒られます。「幕コレ」はニッチ市場に留まらず、⽂化的価値を備えたコンテンツへと成⻑しています。⾃社の強みや⽅向性に悩む中⼩企業にとって、多くの⽰唆を与える事例といえるでしょう。

早川昌宏/中小企業診断士<チーフアドバイザー>
支援も趣味でも走ります
IT・DX導⼊を中⼼に法⼈向けコンサルティングに従事していました。「業務とシステムは両輪、でも、システムはあくまでツール」をモットーに経営課題の整理から実⾏⽀援を中⼩企業から上場企業、⾃治体まで幅広い⽀援実績があり、伴⾛型の⽀援を強みとしています。
趣味の自動車はレースでは、プロレーサーにならないかとスカウトされたことが2回あります。





