便利な「平均値」の落とし穴
データ分析において、平均値はよく使用される要約統計量です。しかし、平均値の利用には注意が必要です。個々のデータの詳細情報が失われ、データのばらつきや異常値が無視される可能性があります。そこで今回は、平均値の限界について考察していきます。
平均値は、莫大な量のデータの要約を提供してくれます。例えば、国内の平均所得を挙げると、厚生労働省が発表したデータによれば約546万円とされています。しかしこの数字に疑問を抱く人も多いのではないでしょうか。なぜなら、この平均値は個々の所得のばらつきや異常な高収入を反映しておらず、データの実態を十分に表現していないからです。例えば無作為にサンプリングした100名の平均所得を考えます。平均値が546万円だったとしても99人が200~350万円の区間にいて、残りの1人が2億5000万円の場合があります。この場合この1人が全体の平均値を上げている状態になります。
データの全体像を把握するためには、平均値だけにとらわれず、「ばらつき」や「異常値」などの要素も考慮する必要があります。データセットにおける個々のばらつきを見ることで、データの分布や特徴をより深く理解することができます。また、異常値を検出することで、データの外れ値や異常なパターンを特定し、問題の発見や洞察を得ることができます。
データの本質を見失わないためには、平均値の限界を認識し、他の要素も考慮する必要があります。データのばらつきや異常値の分析を通じて、データの全体像をより正確に把握することができます。データ分析においては、平均値を補完する手法を駆使し、データの多面的な理解を追求することが重要です。
多面的な理解のために重要な「ばらつき」についてはまた、今後の機会にお話できればと思います。
《 平林丈晴 / 中小企業診断士 》