給与担当者必見! 複雑怪奇な定額減税 ~対象者を把握する3ステップ~

定額減税とは、納税者本人とその同一生計配偶者及び扶養親族につき、所得税3万円、住民税1万円の合計4万円が税金から控除される制度です。

住民税は区市町村が計算してくれますので、ここでは、所得税について取り上げます。
また、給与所得者を前提として解説しています。

例えば、同一生計配偶者1名、扶養親族1名の給与所得者は、所得税について3万円×3人=9万円が令和6年6月以降の給与等の支払いに係る源泉徴収税額から控除されます。

正しく計算する際のポイントは、対象者の正確な把握です。

対象となる「納税者本人」「同一生計配偶者」「扶養親族」について正確に把握する必要があります。
年末調整の際の「源泉控除対象配偶者」や「控除対象扶養親族」とは概念が異なるため注意が必要です。

それでは、対象者を判定していきましょう!

★ステップ1:納税者本人(基準日在職者)の判定
定額減税の対象となる「納税者本人」は、基準日在職者です。

基準日在職者の判定フロー

1.令和6年6月1日時点で在職中ですか?
⇒NO:対象外です(例えば6月2日以降に入社した方は対象外です)。

⇒YESの場合
 1-2.扶養控除等申告書(※1)を提出していますか(甲欄適用者ですか)?
  ⇒NO:対象外です。

  ⇒YESの場合
  1-3.居住者ですか(ざっくり言うと日本に住んでいますか)?
   →NO:対象外です。

   →YESの場合
    基準日在職者に該当します。
    本人分の3万円の減税対象です!

★ステップ2:同一生計配偶者の判定

同一生計配偶者の判定フロー

2.基準日在職者に配偶者はいますか?
 ⇒NO:加算なしです。

 ⇒YESの場合
 2-2.扶養控除等申告書(※1)の源泉控除対象配偶者の記載がありますか?
  ⇒NOの場合
  2-3-1.配偶者の氏名等が書かれた源泉徴収に係る申告書(※2)の提出を受けましたか?
   →NO:加算なしです。

   →YESの場合
    同一生計配偶者に該当します。
    配偶者分の3万円を減税額に加算します!

  ⇒YESの場合
  2-3-2.その配偶者は、令和6年中の所得の見積額の欄が48万円以下で、居住者ですか?
   →NO:加算なしです。

   →YESの場合
    同一生計配偶者に該当します。
    配偶者分の3万円を減税額に加算します!

★ステップ3:扶養親族の判定

扶養親族の判定フロー

3.基準日在職者に扶養親族(令和6年分の合計所得が48万円以下)はいますか?
 ⇒NO:加算なしです。

 ⇒YESの場合
 3-2.扶養控除等申告書(※1)の控除対象扶養親族欄又は住民税に関する事項の16歳未満の扶養親族欄に記載がありますか?
  ⇒NOの場合
  3-3-1.扶養親族の氏名等が書かれた源泉徴収に係る申告書(※2)の提出を受けましたか?
   →NO:加算なしです。

   →YESの場合
    扶養親族に該当します。
    3万円×扶養親族の人数を減税額に加算します!

  ⇒YESの場合
  3-3-2.その扶養親族は、居住者ですか?
   →NO:加算なしです。

   →YESの場合
    扶養親族に該当します。
    3万円×扶養親族の人数を減税額に加算します!

上記の3ステップの結果、合算される控除額を令和6年6月以降の給与等の支払いに係る源泉徴収税額から控除します。6月だけで控除しきれなければ7月、8月・・・12月で控除しますので、従業員別に把握して年内は継続管理が必要です。
なお、令和6年中に控除しきれない額は給付金として支給されます。

ウッウッ(><)っと言いたくなるのもわかりますが、給与担当者の腕の見せ所ですね。
丁寧に判定して乗り切りましょう!

※1:令和6年分扶養控除等申告書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/2024bun_01_input.pdf
※2:源泉徴収に係る申告書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/teigaku/pdf/0024002-044_01.pdf

《 利光 洋一 / 中小企業診断士・公認会計士・税理士 》