自分のために活用する事業計画
開業時の融資申込や、補助金を申請する際、「事業計画書」の作成は必要です。
第三者が読むために作成した事業計画書ですが、それだけではなく、開業後に自分自身で活用することも大切です。
月毎に売上の計画(目標)を事前に立てておけば、実態との乖離を早期に確認することができます。
もし実態が計画を下回っている場合、それはどうしてなのか、確認してみましょう。
計画を下回っている店舗に共通する特徴を以下のとおり3つにまとめました。
1.十分に検討しないで事業計画を作成した
事業計画がその店舗の立地を考慮していないケースがあります。立地を考える際、最寄り駅の乗降客数や近隣の人口動態などネットから入手できる情報も参考にしていただきたいですが、実際の店舗の前はどうなのかも確認しましょう。また時間帯やその前を通る通行人の層もターゲットに合っているのか、ということまで確認しましょう。ネットで集客するので立地は重視していないという場合は、費用対効果があるのかも考えましょう。
2.前職の実績がそのまま当てはまると考えた
前職で「1人で1日〇人のお客様をこなせていたから、開業後もできるはず」という計画を立てるケースがあります。前職の勤務先自体にブランド力がある場合、開業直後の店舗も同様になるとは限りません。また、開業したら掃除や事務など直接売上に繋がらない業務を行わなければならないことも考慮する必要があります。
3.日常感のある店舗
直接的な関連はなさそうな話ですが、例えば整体院やネイルサロンで、電化製品のコードが絡まっている、細かいところに埃が溜まっている、植木鉢が枯れている、といった店舗では計画を上回っているケースはほとんど見受けられません。そのようなところはリピート率が低くなる傾向があり、結果として売上も伸びません。
非日常感を求めてくる多くのお客様にとって、自宅では容認できることであっても、店舗としては「また来たい」という気持ちにならないですよね。
いざ開業してみると、思った通りにならない事も多々あります。計画との乖離が大きくなる前に、問題点に早く気付くことができたら、対策を取って挽回することが可能です。
つぎのようなケースがありました。
視認性の低い立地で開業したため、来店客が増えるか心配していたのですが、店主のコミュニケーション能力の高さを活かして、来店客から「してほしいこと」をひきだし、オプションメニューをお客様に積極的に提案することで客単価を上げることに成功しました。結果として、来店客の増がなくても売上高は計画に近づくようになりました。
計画と現実との差を毎月チェックして、問題点に早く気付くことができたからこそ、対策が取れたとも言えます。
《 鈴木 香織 / 中小企業診断士 》