労働保険の年度更新の受付が開始されました。

従業員を雇用している場合には、労働保険に加入しなければなりません。

この労働保険の加入に係る保険料は、前年度における見込みの賃金額に基づいて計算・前払いした概算保険料と、前年度に実際に賃金として支払った賃金額に基づいて計算した確定保険料とを精算し、今年度の賃金の見込み額に基づいた概算保険料に合わせて申告・納付します。

この前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と今年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きが年度更新です。

令和6年度労働保険の年度更新期間は、「6月3日(月)~7月10日(水)」です。

期限までに年度更新の手続きを行わなかった場合には、政府が保険料・拠出金の額を決定し、確定保険料に加え10%の追徴金と合わせて事業主に請求します。なお、概算保険料に対する追徴金はありません。

  • 年度更新の主なポイント
  • 集計する賃金は?

原則として名称にかかわらず労働に対して支払われるすべてのものを賃金として集計します。

なお、賃金に含まれないものは、役員報酬、災害見舞金、解雇予告手当などのほか、出張旅費や宿泊費といった業務の遂行に必要な費用の実費弁償に当たることが明らかなものは賃金に含まれません。そのため在宅勤務が行われる際の交通費の取扱いには注意が必要です。

ご参考:厚生労働省/労働保険対象賃金の範囲(継続事業用)

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/hoken/kakikata/dl/keizoku-07.pdf

  • 労働者の範囲を間違えない

労災保険と雇用保険とでは対象者が異なります。

<基本的な考え方>

労災保険:雇用形態にかかわらずすべての労働者。

雇用保険:週所定労働時間20時間以上、31日以上の雇用見込みがある労働者。

※労働者の範囲についての詳細は以下をご参照ください。

ご参考:厚生労働省/労働保険対象者の範囲(継続事業用)

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/hoken/kakikata/dl/keizoku-06.pdf

したがって、雇用保険の対象者が労災保険の対象者よりも限定されることから、特別な理由がない限り雇用保険の対象となる賃金集計額が労災保険の対象となる賃金集計額を上回ることはありません。

  • 保険料負担は誰?

労災保険料は、全額事業主が負担します。そのほか一般拠出金も全額事業主が負担する必要があります。一般拠出金とは、アスベストで健康被害を受けた人を救済する費用に充てるために全事業主が負担するものです。

雇用保険料は、失業等や育児休業に係る保険料を労働者と折半します。一方、雇用の安定や能力の開発などといった雇用対策に充てるための雇用保険二事業分の保険料については全額事業主が負担します。

これら負担に応じた各保険料等を年度更新で事業主が申告・納付します。

  • 年度更新の手順

年度更新の手順は以下のとおりです。

  1. 管轄の労働局から事業所宛に届いた申告書を確認する。
  2. 継続事業用の算定基礎賃金集計表や一括有期事業の一括有期事業報告書・一括有期事業総括表などといった資料を作成する。
  3. 申告書を記入・提出し、労働保険料を納付する。

なお、賃上げなどを実施した場合や退職者が出た場合であっても、前年度と比較して1/2以上ないしは2倍以下の範囲に収まる場合には、今年度の賃金見込み額は前年度の確定保険料を計算した賃金額と同額になります。

事業所宛に届いた申告書に印字された保険料率をそのまま使用して計算します。

  • 雇用保険料率、労災保険料率について

なお、雇用保険料率については変更がありませんが、いくつかの業種で令和6年4月以降の労災保険料率が変更されています。

口座振替の手続を行うと窓口へ行く手間や待ち時間が解消されるほか、納付の忘れや遅れがなくなるため延滞金を課される心配がありません。また、口座振替では本来の納期限より引き落とし時期が最大約2か月遅くなるため、ゆとりができます

  • カンタン・便利な口座振替と電子申請

電子申請は24時間いつでも可能なことはもちろん手書きや窓口に出向く負担を削減することが可能で、初期設定をお手伝いや疑問解消に労働保険電子申請アドバイザーを利用することもできます。

《 堅持 博 / 社会保険労務士 》