株式移転の注意点  

現社長からお子様への事業承継の場合、後継者が主体となった株式の移転の強制は、あまり良い結果になりません。

理由は、辞めて行く側の気分として、個人の懐にある財産(株式)に、手を突っ込まれるような嫌な気分になるからです。

正当な理由として、株が無ければ信用形成ができないから過半数は欲しい、という場合もあるとは思いますが、

しかし、多くの場合は、株券は個人固有の財産ですから、親子とはいえ、露骨によこせというのは気分を害する元になるという事です。

なので、現社長の側が、自然に渡すように仕向けていく事が必要です。

大株主の場合は特に、後継者側からの発言や行動には細心の注意が必要です。

そして、現社長の健康が良いならば、少しずつ時間をかけて贈与する方法や、死亡時精算課税制度の利用も含めて、顧問税理士さんの意見も聞いてみましょう。

もし私のように、従業員・取締役など家族以外への譲渡の場合には、現社長のマインド面への過剰な配慮は、大きなリスクとなります。

弁護士などの法律家としっかりと相談し、株式譲渡契約書で齟齬の無い、会社の未来を形成しましょう。

この場合ならば、後継者側からの強いアプローチでも問題ありません。

他人同士が円満に会社を受け渡すのですから、合理的に形式重視で、株式の移転を行わねばなりません。

後継者の側からは、株価の推移を見ながら、なるべく早期に過半数を掌握すべきです。

その結果、安定的な経営権の事業承継が可能となります。

《 内藤 博 / 中小企業診断士・事業承継士 》