資金繰りのアドバイスをするのが士業(専門家)の役割!

新型コロナウイルスの影響で売上が減少し、経営や労務に関する相談が増えています。私も行政官庁で様々な労働問題を扱うため、事業所の方から経営や労使の紛争に関する相談を受ける機会が多くあります。社会保険労務士として最も気になるのが、資金繰りやキャッシュフローの問題。賃金支払いは現金払いが原則、つまり、待ったなしの支払いとなるのは、取引先への支払いと同じです。

「現金が無くても、順調なら大丈夫では?」と社長に聞かれますが、「支払いサイトに応じて、月商2~3ヶ月の現金は確保しておくのが理想」と回答します。なぜなら、不動産バブル・ITバブル・リーマンショックと10年に一度の危機や突発的なアクシデントは必ずおとずれるからです。

キャッシュフローとは?

キャッシュフローとは「お金(現金)の収支」のことであり、以下の➀➁③の合計となります。キャッシュフロー計算書は、「お金が増えた・減った」の要因をお金の流れから見ることができる計算書のことです。お金の増減要因を計算しているだけなので、期初の現預金残高に➀➁③を加えた金額が期末の現預金残高と一致します。

営業キャッシュフロー(➀)は、本業における現金の収支です。これがマイナスになるのは、本業での収支がマイナスという意味です。投資キャッシュフロー(➁)は、事業を維持するための固定資産の取得や売却に伴う収支です。中でも、➀➁の合計はフリーキャッシュフローと呼ばれ、会社が自由に使えるお金の収支を意味し、最も大切です。財務キャッシュフロー(③)は、会社の資金が不足した時の資金調達や返済などの合計で、「銀行の融資と返済」と考えるとわかりやすいでしょう。

【➀営業キャッシュフロー(本業の収支)】

・経常利益・経常損失(±)

・法人税などの支払い(-)

・減価償却費(+)

・売掛債権や棚卸資産の増加・減少(±) その他資産の増加・減少(±)

・買掛債務の増加・減少(∓) 割引手形の増加減少(∓)

・その他債務の増加・減少(∓)

【➁設備キャッシュフロー(設備投資などによる収支)】

    ・固定資産の増加・減少(±)

【③財務キャッシュフロー(借入金など資金調達における収支)】

    ・借入金、社債の増加・減少(±)

    ・配当金の支払い(-)

キャッシュフローや資金繰りと「利益」は別もの

昨今の新型コロナの影響で売上が大きく減少した場合はどうなるでしょうか?売上減少と休業手当の支払いで、営業キャッシュフローは大きくマイナスとなります。そのため、国は雇用調整助成金など各種支援により、企業と従業員を守ろうとしているのです。ときには緊急融資などを利用して、資金調達を優先して財務キャッシュフローをプラスにすることで、資金不足を解消した方が良いケースもあるでしょう。

また、雇用調整助成金を利用するには、休業手当を先に支払う必要があります。現金をある程度確保していないと休業手当は払えず、雇用調整助成金は対象外、つまり、現金が無ければ何かあった時に対応ができず、「会社の危機」となるのです。助成金は企業が先に資金を負担するものが多く、もらえるにしても一定期間資金繰りの悪化を招く可能性があるものです。利益とキャッシュフローも一致するものではないので、どんなに利益を出してもキャッシュフローがマイナスになれば、資金繰りに支障が生じます。

助成金・補助金、緊急融資など、幅広く資金繰りの相談ができるネリサポの専門家のアドバイスを受けるのが一番です。

《 加治 直樹 / 特定社会保険労務士 》