「提供価値」を考えてみませんか
事業者のみなさまは、自社や自店が販売・提供する製品・商品・サービス(以下、製品等)に対してはみなさん自信をお持ちかと思います。
「うちの製品は技術的に○○が優れている」「うちのサービスは同業の△△と比べてもレベルが高い」などと密かに考えている方も少なくないでしょう。それでは、そうした製品等は売れていますか? 売れていれば良いのですが、「どうも売れ行きが悪い」「こんなに良いものなのに何で売れないのだろう」ということはないでしょうか。
売れない原因は、価格、競合の存在、顧客のニーズが減少(無い)など様々ですが、「提供価値」という視点から、なぜ売れないのか、どうしたら売れるのかを考えてみませんか。「提供価値」とは、企業が顧客に提供する製品等がもたらす価値、具体的には、顧客がその商品やサービスを利用することで得られる利益やメリット、または顧客が抱えている課題の解決策を指します。
製品等を販売・提供する際には、対象としている顧客が自社(自店)の製品等を買うことで、期待している利益やメリットを得られるのかあるいは抱えている課題を解決できるのかを考えることが必要です。もし、売れていないのであれば、顧客に利益やメリットをもたらしていないあるいは課題を解決していないということです。つまり、製品等の品質や性能が優れていても、それが顧客にとって利益やメリットがなかったら顧客は買わないということです。
もし売れていないのなら、まず最初に自社(自店)の製品等によって利益やメリットを得られる顧客はどこにいるのか、課題が解決される顧客は誰なのかを考え、その顧客へのアプローチ方法、製品等の提供手段、価格設定などマーケティング戦略を考えることが必要です。
ここで、女性専用のフィットネスクラブ「カーブス」を例に、「提供価値」を見てみましょう。カーブスが、他の一般的なフィットネスクラブと異なるところ所は、
・会員をはじめ、コーチやスタッフはすべて女性であること。
・トレーニングプログラムは、1回30分の「筋トレ+サーキットトレーニング」のみであること。
・鏡やシャワー設備がないこと
・エアロビクスやヨガなどの運動プログラムがないこと
・店舗数が多いので通いやすいこと(全国1974店舗、参考:総合型フィットネス首位のセントラル、223店舗)
などです。
言い換えれば、「運動したい」と思っていても、「男性の目が気になる」「終わった後シャワーや化粧が大変」「気軽に短時間で運動したい」「遠くて通うのに時間がかかる」などの「課題」を持っている女性にとっては、一般のフィットネスクラブではその課題を解決できませんが、カーブスを利用することで解決し、利益やメリットを得られるということです。逆に言うと、一般的なフィットネスクラブでは、いくら設備やプログラムが素晴らしくても又コーチの指導技術が優れていても、こうした課題を解決することはできない、つまり「提供価値」は無い(低い)ということになります。
ご自身が提供している製品等が、お客様の持っている「課題」を解決しているのか、利益やメリットをもたらしているのか、といった「提供価値」を考えてみたらいかがでしょうか。
《 前田 通孝 / 中小企業診断士 》