「また来たい」と思わせる仕掛け ─ “常連化曲線”から学ぶポイントカード設計術

 小さなお店にとって、一度きりのお客様を「また来たい」と思ってもらえるかどうかは、事業継続にとって大切なテーマです。

 この時代、来店自体が奇跡のようなご縁。できれば、あと2回、3回来ていただきたい。なぜなら、その3回目が“常連さん”になるかどうかの分かれ道だからです。

 実は、こうした顧客の行動を数字で捉えた「常連化曲線」という考え方があります。株式会社トレタが収集した実データでは、初回来店から2回目の再来店率はわずか10%前後。それが3回目になると30%以上に跳ね上がり、4回目・5回目と進むごとに再来店の確率が安定していく。つまり初回〜3回目」までが、最もリスクが高く、最もチャンスが大きいフェーズなのです。


引用 : https://codezine.jp/article/detail/11407

 ところが、街のお店の施策を見ると「10回来店で◯◯プレゼント」といった、いわば“ゴールのご褒美”ばかりが目立ちます。でも、実はその10回目まで到達できる人はごくわずか。最初の数回で離れてしまう人のほうが圧倒的に多いんですね。

 だからこそ、「1〜3回目」にこそ特典を厚くする必要があります。初回には、次回使える「お試しクーポン」や「○○無料」など、即時性のある特典を添えて、お客様の背中をそっと押す。

 2回目来店では、例えば“期間限定でポイント2倍”のような仕掛けで、短期間のうちに3回目につなげる。このステップがスムーズにつながれば、お客様との関係性は一気に安定していきます。

 もちろん、3回目には「常連認定」感を出すことも忘れずに。来店特典のアップグレードや、限定メニューの案内、「次回使えるお楽しみ券」など、気持ちのこもった施策が有効です。

大切なのは、「最初の3回でどれだけ心をつかめるか」ここで特典を渋ると、長期的に見れば損失のほうが大きくなるリスクすらあります。

 常連化曲線は数字の話ですが、その本質は「人と人との関係性をどう育てるか」にあります。ちょっとした特典、ちょっとした驚きの積み重ねが、やがて“あのお店、また行きたくなるんだよね”という気持ちを育ててくれるのです。

 小さなお店こそ、こうした細やかな仕掛けが強みになる。“常連さん”は、遠くにいる誰かではなく、目の前のそのお客様なのだと思って、ぜひ一歩目から丁寧に設計してみてください。

《 平林 丈晴/ 中小企業診断士 》