デジタル化を加速するクラウドアプリ選び ―フロー型とストック型の使い分け―

デジタル化が進む企業では、多様な市販クラウドアプリを使いこなすことで、業務の生産性向上を実現しています。一方で、まだデジタル化に踏み出せず、紙ベースで仕事を続けている企業では「どんなクラウドアプリを使えばよいかわからない」という声も少なくありません。
本コラムでは、クラウドアプリ選びの一つの考え方として、情報の流れや蓄積に着目して、便宜的に「フロー型クラウドアプリ」と「ストック型クラウドアプリ」の二つのタイプに分ける視点をご紹介します。

1.フロー型クラウドアプリ:日常業務の“流れ”を支える
フロー型のクラウドアプリは、日々のコミュニケーションやリアルタイムな情報共有、短期的な連絡・調整など、“今ここ”で起きている業務の流れを円滑化・効率化するためのものです。業務のスピードや柔軟性が求められる場面で特に有効です。主な利用形態としては、チャット(テキストによるやりとり)やオンライン会議などが挙げられます。
《特徴》
・即時性・双方向性:
 メッセージや通知が即座に伝わり、双方向のコミュニケーションが可能です。
・柔軟な連携:
 メンバー同士が気軽に相談・調整でき、状況に応じて迅速な対応ができます。
・一過性:
 基本的にその時々のやりとりであり、ログは残りますが流動的な情報となりがちです。

2.ストック型クラウドアプリ:情報やノウハウを“貯める”
ストック型のクラウドアプリは、業務ノウハウやドキュメント、過去の事例やデータなどを蓄積し、後から参照可能な形で体系化・管理するためのものです。必要な人が必要なときに情報にアクセスできる環境を整えることは、組織としての知見の継承や属人化の解消に不可欠です。主な利用形態としては、ファイルストレージ、ナレッジ管理などが挙げられます。
《特徴》
・長期保存・再利用:
 情報を“資産”として蓄積・管理でき、過去の知見を繰り返し活用できます。
・検索性・体系化:
 タグやフォルダ、検索機能を活用し、必要な情報をすばやく探すことができます。
・共有・連携:
 複数人で編集・参照できるため、組織全体でナレッジを活用できます。

最近では、クラウドアプリの機能拡張が進んだり、複数のクラウドアプリがパッケージとして提供されたりするため、必ずしもこのような二分化ができるわけではありませんが、自社への導入の最初の一歩としてはシンプルに「フロー型」と「ストック型」という2つの区分を意識してデジタル化を進めることをおすすめします。業務の“流れ”をスピードアップし、“貯め”を最適化することで、生産性の向上につなげることができます。
クラウドアプリの導入や自社の業務フローに合うクラウドアプリ選びでお困りの際は、ぜひネリサポのデジタルサポート相談をご活用ください。デジタル環境を少しずつ整えていきましょう。

 《 滝澤 暢 / 中小企業診断士 》