中小企業診断士が巡る、練馬の街 ~ 酒楽処 ずび's Bar ~
今回は、西武池袋線大泉学園駅北口にある居酒屋「ずび's Bar」をご紹介します。
家族3人で始めた小さなBarが、今では地域の人々に愛される"居場所"になっています。明るく語る女性オーナーの5年間に、どのような成功・失敗があったのでしょうか?
店舗情報
酒楽処 ずび's BAR
代 表: 翁長 明子
業 種: 居酒屋
住 所: 東京都練馬区東大泉1-31-11 2F

「コロナ終わると思ってました(笑)」— 開業当時を振り返る
ずび's Barは、2020年7月26日にオープンしました。
「私はコロナが終わると思ってオープンしたんですよ。でも今振り返れば、あのタイミングで開業するなんてね(笑)」と笑いながら振り返るオーナーの翁長さん。
最初のお客さんは、ご主人のテニススクールの仲間たちが応援してくれてスタートすることができましたが、実際には、オープン後に何度も緊急事態宣言が発令され、収束の目処が立たない状況、給付金に助けられながらのスタートでした。
「一番厳しかったのは、意外にも緊急事態宣言が解かれコロナが落ち着いた直後。緊急事態宣言明けに来てくれた知り合いの方々も、徐々に行きつけの店に戻っていきます。みんな我慢してた分、行きたかったお店に戻っていくんですよね。新規参入の私たちは本当に大変でした!」「ここからが本当の勝負でした」とオーナーは語ります。
人から人へ、広がる輪
噂が噂を呼ぶ、大泉スタイル!?
新しいお客様が増え始めてきた転機は、近隣のスナックからの口コミでした。「家族でやってる新しいBarがあるらしいよ」という噂が、地元の人たちを連れてきてくれました。「地元の方って、近くに新しいお店ができると興味本位で来てくれるんです。で、気に入ってくださったらカウンターに座って常連さんになってくれる。その積み重ねですね!」
ゴルフコンペで「ごちゃまぜ」交流会
ご主人が主催していたゴルフコンペも、当店のイベントとして継続的に開催されています。
これは単なる集客イベントではありません。オーナーが一人ひとりに声をかけて集まった参加者の皆さんが、ゴルフを通して「ごちゃまぜ」になって交流し、また店で再会します。この循環が、お店の魅力をどんどん広げてくれています。
家族3人だから!?意外な効果
ご主人、娘さん、そしてオーナー自身の3人で始めたずび's Bar。平日は翁長さん一人、週末は家族やアルバイトに手伝ってもらう体制で切り盛りしています。
特に、家族の存在が経営を支えていると、翁長さんは語ってくれました。
面白いのが、店内の防犯カメラの使い方です。家族3人のスマートフォンから、店の様子がリアルタイムで見られる仕組みになっています。自宅にいる夫と娘が、カメラで店内をチェックします。混雑してきたら、すぐに駆けつけます。「『今日は忙しいね』『暇だね』って家族で共有できるんです。最近ちょっと客足が減ってるから何かしなきゃ、とか。家族だからこその連携ですね」
この絶妙な距離感が、無理のない経営を可能にしています。
この家族経営スタイルが、思いがけず大評判になりました。「『家族でやってるって聞いて来ました』って言われることが本当に多くて。この街は狭いので、珍しいお店があるとみんな一度は来てくれるんですよ」
女性経営者ならではの工夫
狭いキッチンだからこそ絶妙な距離感
当店の看板メニューで、一番人気はゴーヤチャンプル。
沖縄系の料理がウリの食べ物もしっかり出る店として、地域で認知されています。



元スナックを改装した当店のキッチンは決して広くありません。しかし、この制約が独特の魅力を生みました。 「完全にスナックの作りなんです。でも私がカウンターの中に立って、お客様と対面で料理を作る。この距離感が面白いって言われます」
カウンター越しに料理を作り、お客さまと会話します。居酒屋なのに、スナックのような独特のスタイルが常連客を惹きつけます。カウンター席で繰り広げられる常連客同士の会話。オーナー自身も一緒に楽しみ、語り合います。この距離の近さが「ずび's Bar」の魅力です。「私もよく喋るんです(笑)。お客様同士も仲良くなって、カウンターはいつも楽しい雰囲気。それを見た新規のお客様も自然と溶け込んでくれます」


「従業員目当て」「一度来た客を絶対逃さない」翁長さんの哲学
「一般的な居酒屋は、料理や酒目当てで来ますよね。でもうちは『従業員目当て』で来てくださる。これがうちの最大の特徴だと思います」オーナー自身のキャラクター、家族の雰囲気、目の前のお客様との関係性を何より大切にしてきました。
2階という立地のハードルを越えて来てくださったお客様には、絶対に満足してお帰りいただきます。
「わざわざ階段を上がって、ドアを開けて入ってきてくれた方には、100%満足していただきたい。その思いは家族で決めた接客の哲学です。」この姿勢が口コミを生み、地域での評判につながりました。
5年目の今、そしてこれから
オープンから5年、順風満帆だったわけではありません。
テニススクールの繋がり、ゴルフコンペ、近隣のスナックとの連携。地域のコミュニティに溶け込み、支えられてきた5年間です。「本当に常連のお客様に助けられました。いつもカウンターに誰かいてくれる。その安心感は大きいですね」
オープン5年目を迎え、新たな課題も見えてきました。常連客だけでなく、新規のお客様をどう獲得するか。ホットペッパーへの掲載で客層が変わった経験を活かし、GoogleマップやSNSの活用にも、ようやく本腰を入れ始めました。「娘が色々と考えてくれて。ITは苦手だけど、これからは新規のお客様も増やしていきたいですね」
常連客に褒められる賑やかな日もあれば、誰も来ない静かな日もあります。この落差が、小規模経営者の心を揺さぶります。「本当にお客さんが来ない日は辛いんです。常連さんがいてくれる日との落差が激しくて。でも、だからこそ『気合を入れ直そう』って思えるんですよね」
この率直な言葉に、同じ悩みを抱える多くの事業者が共感するでしょう。
コロナ禍という逆境、2階という立地、狭いキッチン。一見不利な条件を、家族の力と地域との繋がりで乗り越えてきた「ずび's Bar」。その軌跡は、小規模事業者が持続的に経営を続けるヒントに溢れています。

眞本崇之 <チーフアドバイザー>
IT活用・マーケティングのハンズオン支援が得意
IT業界出身であることから、ITを絡めた支援を得意としています。IT・パソコン操作が苦手な方にも、実際にやってみせながら導入するハンズオン支援を行っています。近年はAI活用にも積極的に取り組んでいます。





