士業が重視する決算書の見方(実態バランスとは?)

社労士をしていると、経営内容を把握して人件費の予算をどれくらいに設定するかなど、お客様から決算書を見せていただく機会が多くあります。経営者にとって「通知表」といわれる決算書は、やはり気になるところです。

決算書の中で実際にじっくりと見るのは「貸借対照表」です。貸借対照表は、決算期などある一時点の会社の財政状態を表し、B/S(バランスシート)と呼ばれます。1年間の売上や利益を計算する「損益計算書」は、利益率や売上の推移程度であまりじっくり見ることはありません。資金調達や企業体力の積み重ねが見えるバランスシートを中心に、お客様に説明することが多くなります。貸借対照表は会社の「歴史」が、損益計算書は「経営者の性格」が現れるなどという方もいます(私レベルではなかなかたどり着けないレベルの話ですが・・・)。

貸借対照表では、右側(貸方)の「負債の部」と「純資産の部」が資金調達、左側(借方)の「資産の部」が資金の運用状況をあらわします。どのようにして資金を調達し、調達した資金がどのような資産に運用されたのかが勘定科目でわかるので、資金の運用状況(資金繰り)・自己資金の積み重ね(企業体力)・保有している資産の種類(企業規模)から、その会社の歴史が見えてくるというわけです。

中小企業の場合、売掛金や棚卸資産、その他流動資産の中に代金回収不能の資産や現金化できない資産が含まれることがあります。不動産やゴルフ会員権などは取得価格で計上することが多く、固定資産も実勢価格に修正する必要があります。具体的には、「回収不能の資産→回収可能額」「時価と乖離している金額の資産→時価ベース」に控除・修正して、対応する金額を純資産の部から控除します。このようにバランスシートを実態の金額に近づけたものを「実態バランスシート」と呼ぶのです。代表者からの借入金も、「負債」とせず自己資本に振り替えて修正することがあります。

大手企業から財務内容の確認を求められる場合、銀行などから融資を受ける場合、賃金カーブを考慮して賃金規程を作成する場合には、企業体力を図るために実態バランスシートを基に検討することになります。士業の先生に一度ご相談してみてはいかがでしょうか。

《 加治 直樹 / 特定社会保険労務士 》