中小企業診断士が巡る、練馬の街 ~ソーイングルーム PALM(パルム)~

自宅を改装して始めた洋裁教室、ソーイングルームPALM(パルム) の代表 小山綾子(こやま あやこ)さん。

大泉学園の静かな住宅街で

大泉学園駅から、住宅街をてくてくと歩くこと10分少々。

今回お邪魔したのは、小学生から大人まで、本格的なソーイングを体験できる教室「ソーイングルームPALM(パルム)」です。

かわいらしいロゴマークの小さな看板がある門にたどり着くと、庭の先にある教室の入り口から、代表の小山綾子さんが笑顔で出迎えてくれているのが見えました。

ロゴマーク

教室概要
所在地:練馬区東大泉2丁目(個人宅のため、詳細は問い合わせにて)
対象:大人、子ども(小学3年~中学生)

特徴:

・初心者~OK、手ぶらOK

・職業用ミシン(JUKI SL-300EX) ロックミシン(2本針4本糸 衣縫人)あり

※レッスン日程など詳細はホームページ・インスタグラムへ

カラムリンク

子どもも大人も、本格用具で自分の作りたいものを作る

ソーイングルーム PALMは
「本を見てひとりで作れるようになる」ことを目標にした初心者向け洋裁教室です。

服や雑貨等、生徒さんそれぞれが好きなものを作ることを、一人ひとりのペースに合わせて進めていきます。

壁には、小山さんの自作だという糸掛けに、カラフルな糸がずらっと並んでいます。

生徒さんはそこから自分で糸を選び、ワゴンから必要な道具を取って作業の準備をします。

「道具の力は大きいので、専用の道具を揃え、生徒さんに自分で選んで使ってもらっています。教室に来たら、手入れされた使いやすい道具でスムーズに作業ができる。それが売りの一つで、大切にしています。ミシンも家庭用ミシンではなく、馬力があって縫いやすい職業用ミシンとロックミシンを揃えているんですよ」

平日日中の大人向けコースに加え、子ども向けの単発コースと、本格的に習いたい人のための継続コースを展開しているソーイングルームPALMさん。

手芸教室は多くあるものの、職業用ミシンを使った本格的なソーイングの教室は珍しく、生徒さんは神奈川や埼玉など広域から訪れます。

「やってみたら意外と子どもと大人は変わらないということに気づいたんですよ。子どもも好きな子はすごく上手で。この教室まで来る子たちはやっぱり興味があって、自分の意志で来ています。ものを作ることが好きだったり、手先を動かすことが好きな子はだいたいハマってくれますね」

お子さんに人気のかわいいポーチ

奥が深いソーイングの世界

初めてレッスンに来たお子さんには、「何事にも理由がある」ということをまず伝えるそう。

「どうしてこういう風に縫うのかな、どうしてこの順番なのかな、と考えてやろうね、と話します。本当に頭を使うんですよ。自分が作りたいものを想像して、これにはどのくらいの材料が必要か、形だけでなく縫い代がつくよとか、その計算からやるんです。きちんとやらないと想像と全く違う大きさのものが出来上がってしまったりするので、まずノートに作りたいものを絵に描いてもらってから、設計図を描いて、材料を準備して…、と進めていきます」

何を作るかについては、子どもの自主性を大事にしています。

「これを作りたいと言われたら、無理だとはあまり言いません。失敗してもいいと思っているんですよ。失敗をしないと学ぶことはないので。思い通りにいかないかもしれないけど、やってみようかという感じで、最後まで作りたいものを作るのをサポートします」

決まったものを作るのではない、作りたいものを作らせてくれる教室はあまりなく、それが人気の理由になっているとのこと。

「あと今の子どもたちは、自分の着ている服も誰かが作っているということが想像できていないんですよね。だからこれもあれも作れるよ、というと大抵びっくりしますが、自分も挑戦してみよう、という気持ちにつながるようです」

既製服と見まがうような作品も作れるようになる

生徒さんのレベルアップとともに成長

元々は、赤ちゃんや子どもの服を作りたいママさんを生徒として想定していた小山さん。

「もちろんそういう方もいらっしゃいますが、多いのはある程度自分の時間が作れる50代以上の方でした。何か新しいことに挑戦しようという人は年配でもパワーがあって、インスタグラムなどでこの教室を見つけて来てくれます。そのような方には、自分の身体に合った自分だけの服とか、『こういうものが欲しい』というはっきりした要望があるんです。そういったニーズに応え、教えられるようになるには自分自身のレベルアップが必要だと感じ、私自身今また学校に通って技術を学んでいます」

小山さんの製作した本格的なコート。裏地を好きな柄にできるのも自作ならでは

身近にあったソーイング

小山さんが洋裁を始めたのは、教室に来るお子さん達とちょうど同じくらいの、10歳の時だったそう。

「昔は洋服を自分で作ることが一般的でしたが、私の親もギリギリその世代で、家にミシンがありました。母親が私の服を作ってくれていて、その影響で私もやるようになったんです。10歳の誕生日に裁縫箱を買ってもらったのが最初でしたね。高校生の頃には自分で服が作れるくらいになっていました」

大学に進学し、家政学部の服飾学科で繊維を学んだ小山さん。就職後は紳士服店での接客販売の道へと進みました。

「接客業は自分に向いていて、好きでした。ただ、販売の仕事はとても忙しく、会社員時代はソーイングからはしばらく離れていました」

「これかもしれない」ビジネスの芽に気付いた瞬間

その後結婚を機に退職すると、子育ての開始とともにソーイングを再開しました。

「また作り始めたらハマってしまって。ある時それをポロっとママ友に話したら、同じ趣味の人が何人かいて、メンバーの自宅で一緒に手作り小物の販売を始めることになりました。そうしたらそれが楽しくて。特に通園・通学グッズは需要があり、思いのほか沢山の人が買いに来てくれました」

活動を数年間続け、だんだんと規模も大きくなった頃、コロナ禍が訪れます。

「マスク不足の時期にマスクを作って集会所で売っていたのですが、そこでマスクの作り方のレッスンをやってみたら、すごく楽しんでいる自分がいて。その時に、教えるのが向いているかもしれない、と気づいて、方向転換しようと思ったんです。それがターニングポイントでした」

その後様々なタイミングが重なり、自宅を改装してのソーイング教室の開業を実現した小山さん。

コロナ禍でのスタートという厳しい環境で当初は集客に苦戦しましたが、これまでに築き上げてきた仲間のネットワークを生かしてマルシェの開催を重ね、地域における知名度を上げながら着実に生徒数を伸ばし、現在に至ります。

大きな窓の外に庭が広がる、のびのびとリラックスした空間

たどり着いた自分らしい道

経営者になってよかったことややりがいを尋ねると、

「やっぱり、自分に決定権があること」

という答えが返ってきました。

「自分で決めて、自分で責任を取らなければいけないというのは苦しくもあるけれど、それは訓練ですね。会社員なら決定権を持つためには昇進して偉くなるしかないけれど、一人でやっていたら自分が意思決定者なので、それがやりがいというか、自分で自分を認めることができていると感じます」

自分が教室を開くことができるとは思っていなかったという小山さん。

「思い返してみれば子供の頃から、自分で考えて作ったり、クリエイティブなことが好きでした。ちょっと変わっていましたね。もともと私は仕事人間ではなく、どちらかと言えば地域活動をしたり、趣味の時間がないと苦しくなってしまうタイプです。だから、ちょっと遅かったかもしれないけれど、いい道を選んだと思っています」

実際に現在も、教室経営に軸足を置きながら“練馬から日本のママを元気に”をコンセプトとした地域団体「こねくとうぃず」の運営にも携わり、精力的に活動を行っています。

様々な「やりたいこと」に情熱を注げるのも、業務の時間配分などを自分で決定できる経営者ならではでしょう。

生徒さんが選びやすいよう、小山さん自身で作ったという糸掛け

ワクワクする気持ちを大事に

今後は「ワクワクすることをしていきたい」とのこと。

「最初は手当たり次第やっていましたが、だんだんと、自分がワクワクしないと続かないということに気づきました。やれるけどワクワクしないことはやらない。今の自分にできて、ワクワクすることを選んでいった方が続くと思っています。自分が楽しんでいるという気持ちが生徒さんにも伝わると思うので、それを大事にしていますね」

今回小山さんにお話を伺って、そのリラックスした穏やかな雰囲気の中に、起業家としてのしなやかな芯の強さと、生き生きとしたエネルギーを感じました。

自分の好きなことをしたい。作りたいものを作りたい。そんな気持ちをシェアし合い、思い思いにワクワクを形にできる素敵なスポットとして、広域から生徒さんが集まってくることにも納得です。

自分のやりたいことに正直に、ワクワクしながら手を動かして自分だけのものを作りたい。 そんな方はぜひ小山さんに会いに、静かな庭の先にある教室へと足を運んでみてください!

ソーイングルームPALM

ホームページ:https://www.sewing-palm.com/

インスタグラム:https://www.instagram.com/sewing_palm/

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青柳 紗千子 <アドバイザー>

ネリサポ総合相談コーナーにて相談員をしております

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