今年の夏も暑い!夏に売れる商品開発と品揃え

~人間心理に基づくアイデア発想で夏に売れる商品・サービスを創り出そう!~

はじめに

 日本の夏はとにかく“暑い”。猛暑日が何日も続くことは決して珍しくなく、人々の生活行動や消費行動に大きな影響を与えています。つまり、夏は商売において“明確で強いニーズが顕在化するビジネスチャンスの季節”なのです。無論、表面的に“夏らしい商品・サービス”を考えるだけではお客様を喜ばせることはできません。大事なのは“人はなぜお金を払うのか”という原理原則に立ち返って商品・サービスを考えるということ。本稿では、人間心理に基づくとてもシンプルな発想法を軸に、夏に売れる商品・サービスの開発の具体的な考え方を紹介します。

人は“苦痛の解決”か“快楽の追求”にしかお金を払わない

 人の購買行動の原理原則は非常にシンプルです。人が商品・サービスに対価を支払う理由は“苦痛の解決”か“快楽の追求”のいずれか、あるいはその両方に集約されます。これは業種や規模を問わずに共通する普遍的なものです。そして夏という季節は、この2つの欲求が極めて強く、かつわかりやすく顕在化するタイミング。暑さや不快感に悩まされる人は“どうにか楽になりたい”と考えます。一方で、夏という季節そのものを楽しみたい人は“もっと気分が上がる体験”を求めます。つまり、夏は“困っている人”と“楽しみたい人”の両方が明確に存在するため、商品・サービス開発(企画)の切り口が非常に作りやすいのです。スモールビジネスなら、ここに着目しない手はありません。

まずは夏の“苦痛の解決”に目を向ける

 実務的な観点から言えば、まず取り組むべきは“苦痛の解決”に沿った商品・サービス開発です。なぜなら、人は痛み・苦しみを感じている状態から脱出するためには、比較的迷わずお金を支払う傾向があるからです。言い換えれば、緊急性と必要性が高い欲求であり、購買行動に直結しやすいのです。夏における主な苦痛の要素は次の通りです。

 ここで重要なのは“暑くて嫌ですよね!”ではなく“誰にとって何がどのように不快なのか?”を具体的に言語化することです。商品・サービス開発の成功率は、この人間心理の解像度で決まると言っても過言ではありません。

 さらに実務的な視点で重要なのは、これらの苦痛が“単独で発生していることは少ない”ということ。例えば、“暑い”という身体的な苦痛は“イライラする”や“外出したくない”などの心理的苦痛、更には“移動がつらい”や“身支度が面倒”などの行動上の苦痛と連鎖して発生したりします。つまり、顧客は一つの不快だけでなく、複数の不快が重なった状態で日常を過ごしているのです。この構造を理解すると、商品・サービスの開発も変わります。単に”暑さ対策“を提供するのではなく”外出が億劫になる一連の不快をまとめて軽減する“といった形で商品・サービスを開発する。これにより、顧客にとっての価値は一気に高まるのです。

事例紹介

 例えば、あるヘッドマッサージサロンでは“夏は寝苦しくて眠れない/体がだるい”という点に着目しました。単にリラクゼーションを提供するのではなく、“夏の寝不足による体のだるさ”という明確な苦痛にフォーカスして解決策(=商品・サービス)を考えたのです。具体的には、頭皮用の冷感スプレーや冷たいおしぼりと冷たいアイマスクの提供に加え、室温・湿度を徹底的に調整し、ぐっすり眠れる快適環境を整備しました。これらを組み合わせた施術を“夏の寝不足解消コース”として期間限定で展開したのです。その結果、常連客の“とにかく深く眠りたい”という夏のニーズにマッチして予約が殺到したのです。更に体験者の声をSNSで発信することで、新規顧客の獲得にも大きく寄与しました。この事例の本質は“顧客の困りごとをピンポイントで解決している”点にあります。苦痛の特定とその解消手段の設計こそが売れる商品・サービス開発の出発点なのです。

“快楽の追求”は夏のエンターテイメント性と相性がいい

 “苦痛の解決”だけだと、商品・サービスはあくまで“必要に迫られて選ばれる存在”にとどまりがち。 “楽しさ”や“気分の高まり”といった快楽の要素にも目を向けて商品・サービスを検討できると品揃えの幅が広くなります。とりわけ夏は、季節そのものに開放感や非日常性が伴うため、この快楽要素と極めて相性が良いのが特徴です。結果として、単価の引き上げやリピート利用、さらには口コミやSNSでの拡散にもつながりやすくなります。では、夏において顧客が求める“快楽”にはどのようなものがあるのでしょうか。主な要素は次の通りです。

 ここで重要なのは、顧客自身がその場を楽しみたくなる仕掛けをどう設計するかです。とりわけ夏は、イベントや季節行事と結びつくことで、日常の延長ではない“特別な体験”へと昇華しやすい時期でもあります。つまり、商品やサービス単体で完結させるのではなく“誰とどのように楽しむのか?”まで含めて設計することが、結果として夏の時期の集客力や話題性を高めるポイントとなります。

事例紹介

 例えば、ある居酒屋では“浴衣で来店したらビール1杯無料”というイベントを実施しました。一見すると単なる販促施策ですが、実際には複数の快楽要素を同時に刺激する体験価値(サービス)になっています。浴衣を着ることで非日常感が生まれ、“場”を共有したいという欲求から友人同士での来店が増え(つまり客数増)、更に写真を撮ってSNSに投稿する動機も強まります。結果として、この夏向けのサービスは集客だけでなくクチコミ拡散まで同時に実現し、特に花火大会の日には行列ができるほどの盛況となりました。ここで重要なのは“値引き”だけではなく“体験の場”を提供しているという点です。しかも、お店側としては特段、何か新しいことをしているわけではありません。お客様を巻き込んで新しい体験サービスにしているのです。

ネーミングは売上を左右する重要要素

 商品やサービスの中身が優れていても、それが伝わらなければ売上アップにはつながりません。その橋渡しを担うのが“ネーミング”です。ネーミングには、興味を引き、価値を高め、情報を拡散させるという3つの力があります。特に中小企業においては、ネーミングが広告的な役割を兼ねるケースも少なくありません。そのため、わかりやすく、イメージしやすく、記憶に残るネーミングを設計することが重要です。最も簡単で効果的なネーミング設計の方法は“既存の言葉の組み合わせ”です。

引用元:https://jobseek.ne.jp/research-report/workproblems/

 例えば“ひんやり”と“睡眠”を組み合わせることで“ひんやり快眠マッサージ”という直感的に理解できる表現/ネーミングが生まれます。この方法の利点は、使っている単語が知られている単語なので、初めて聞いた人でもなんとなく意味が想像できる点にあります。一方で、完全な造語は注意が必要です。特に知名度の低い事業者の場合“意味が伝わらない=検討対象にすら入らない”というリスクが高まります。まずは伝わることを優先し、その上で差別化を図るという順序が現実的です。

おわりに

 夏は毎年確実に訪れます。そして、夏は人間が本能に沿ってわかりやすい行動をとる時期でもあります。つまり、前もって準備さえすれば、再現性高く成果を出せる季節でもあります。“暑いから売れない”と嘆くのか。“暑いからこそ売れる”と捉えるのか。この視点の違いが、商売の結果の差となって現れます。苦痛を的確に捉えてそれを解決する。更に快楽も提供する。そして、それを伝わるネーミングで表現する。人間心理を深く理解することで、夏の商品・サービス開発の質は確実に向上します。今年の夏は、売上を伸ばすための好機と捉えてみてはいかがでしょうか。今この瞬間から準備を始めることが、夏商戦を制する第一歩となります。商売の基本は季節・タイミングを見極めて売れる時にもっと売る。さあ、今すぐ夏商戦に向けて商品・サービス開発に着手しましょう!

合同会社クレイジーコンサルティング

代表社員 酒井勇貴

メーカー研究者・ベンチャーキャピタル・ベンチャー経営陣という3つの経験を駆使。

従業員数人から1万人規模まで、業種業態を問わず、生産性向上支援を続けている。