中小企業診断士が巡る、練馬の街 ~鍼処SHIRAKAWA練馬院~

今回の記事は、練馬区平和台で鍼灸マッサージを展開する株式会社太陽堂の紹介です。従来、訪問マッサージを主力事業としていた当社は、2024年に訪問マッサージ部門を事業譲渡。現在は平和台の店舗にて「ルート治療」を提供する来院型店舗の事業形態に変更されました。
今回は、当社の変遷や想いについて、代表取締役の嵯峨野さんに話を伺いました。

企業情報
会社名:株式会社太陽堂
業 種:施術業(鍼灸マッサージ)
代表者:嵯峨野祐輔
店舗情報
店舗名:鍼処SHIRAKAWA練馬院
所在地:練馬区平和台3-22-19
営業時間:9:30 - 21:00
定休日:日・月・木
大きな決断 - 訪問マッサージ事業からの撤退
2011年、27歳で訪問マッサージのキャリアをスタートさせた嵯峨野さん。下赤塚での事業所開設を経て、2019年5月に練馬区の商店街空き店舗入居促進事業を活用し、現在の練馬区平和台に移転。「太陽堂鍼灸マッサージ院練馬」として新たなステージへと歩みを進めました。2024年までに従業員10名規模まで組織を成長させ、訪問マッサージを中心に地域の高齢者の方々の健康をサポートしてきました。
しかし、2024年6月、当社は訪問マッサージ部門の事業譲渡という大きな決断を下しました。
この決断の背景には、コロナ禍による事業環境の変化や慢性的な人材確保の課題がありました。特に、鍼灸マッサージ師という国家資格を持つスタッフの採用難は深刻で、退職者が出ても新たな人材の確保が困難な状況が続いていました。
「スタッフが3人、退職希望が出た時が転機でした。一生懸命募集をかけても全く応募がなく、これからの事業継続の難しさを実感しました。また、訪問マッサージと自費診療の鍼灸院との二足のわらじを履くことで、自分のエネルギーが分散してしまうことを強く感じていました。長年築き上げてきた患者さんとの関係や、働くスタッフの雇用を守ることも必要でしたので、事業譲渡を選択しました。」と嵯峨野さんは当時を振り返ります。
友人が経営する治療院に事業を移管することで、患者さんの治療継続とスタッフの雇用維持を実現。さらに、嵯峨野さんも取引先への挨拶回りに同行するなど、丁寧な引き継ぎにも注力しました。
ルート治療への専念と決意
訪問マッサージ部門を譲渡した後、嵯峨野さんが注力しているのが「ルート治療」という専門的な治療体系です。
ルート治療とは
主に鍼灸を用いた治療法で、身体に蓄積された「コリ」を取り除くことを目的としています。この治療法は、慢性症状や急性症状を問わず、あらゆる身体の痛みや疾患が「コリ」に起因すると考えられています。ルート治療は単なる技術だけでなく、患者さんの本質的な部分に向き合う治療法です。治療を通じて、患者さん自身が自分の生き方や価値観を見つめ直すきっかけにもなります。



そして2025年、店舗名を「鍼処SHIRAKAWA練馬院」に変更。
「ルート治療の創始者である白川勇作先生に、直接お会いして承認をいただきました。これは単なる屋号変更以上の意味があります。」
「鍼処SHIRAKAWA」の看板を背負う責任と、ルート治療に対するさらなる技術向上への決意を感じとることができました。




また最近では、「空ルート」という新しい治療法への取り組みも始めています。これは鍼を使用しない治療法で、一般の方でも学ぶことができます。主婦や占い師、ヨガの先生など、様々な職種の人々が参加し、すでに1200人以上のセラピストが誕生しています。
嵯峨野さんは講師資格を取得し、今後はセミナー事業も展開していく予定だそうです。「治療と講師活動の二本柱で、より多くの人にルート治療の価値を伝えていきたい」と意気込みます。
治療家としての誇りと未来への展望

嵯峨野さんは、自身を「職人タイプ」だと分析します。
「以前は大きな組織を作ることを目指していました。しかし、自分の本質は目の前の患者さんに向き合い、技術を磨き続けることにあると気づきました」
この気づきは、経営スタイルの変更、事業譲渡の決断にも影響を与えました。組織の規模を追うのではなく、一人の治療家として深い専門性を追求する道を選んだのです。
「シンプルな経営体制になったことで、かえって心と体に余裕が生まれました。規模は小さくなりましたが、一人ひとりの患者さんと向き合う時間は確実に増えました。これからは自分のペースで、患者さんとしっかり向き合える治療を続けていきたい。今後の目標として掲げているのが、以前の組織での売上高を一人で達成することです。より質の高い治療を提供することで、必ず達成できると考えています」
40歳という比較的若い年齢での大きな転換。しかし、その表情からは迷いは感じられません。
治療家として、そして一人の経営者として、新たな道を歩み始めた嵯峨野さんの挑戦は、まだ始まったばかりです。

眞本崇之 <チーフアドバイザー>
IT活用・マーケティングのハンズオン支援が得意
IT業界出身であることから、ITを絡めた支援を得意としています。IT・パソコン操作が苦手な方にも、実際にやってみせながら導入するハンズオン支援を行っています。近年はAI活用にも積極的に取り組んでいます。