中小企業診断士が巡る、練馬の街 ~なないろ訪問看護ステーション~

今回は練馬区三原台で2019年9月から創業している「なないろ訪問看護ステーション」を紹介します。訪問看護とは、看護師が利用者の自宅を訪問し医療的ケアや養上の支援を行う事業です。当ステーションは地域医療インフラの一翼を担っています。今回お話を伺った代表社員の吉村朋晃さんは、2018年秋に創業練馬塾を受講された方です。

 所在地 : 2か所で運営

 【三原台事務所】 〒177-0031 東京都練馬区三原台1丁目29-8 104号室 
 【サテライトオフィス】〒178-0063 東京都練馬区東大泉5丁目9-16 102号室

 訪問エリア
 練馬区西部を中心に訪問。三原台、東大泉、石神井町、石神井台、大泉学園町、大泉町、谷原、高野台、南田中

 スタッフ:
  看護師 6名

 特徴
  ・提案型看護により、早期回復を図る。

  ・認知症、糖尿病、神経難病 の看護に長けている。


はじめに:看護の現場から生まれた挑戦

 「このままじゃ、患者さんも看護師も幸せになれない。」
そんな思いから生まれたのが、東京都練馬区に拠点を構える「なないろ訪問看護ステーション」です。創業は2019年9月。今では6年目を迎え、地域で必要とされる存在に成長しています。
代表は病院で看護師として勤務後、三か所の看護ステーションで修行。現場で感じた違和感──たとえば、処置のやり方が古いまま変わらないこと、情報共有が電話中心で非効率なことなど──を、なんとか変えたいと考えたのが、独立のきっかけでした。

看護師が看護師らしく働ける場所をつくりたい

なないろ訪問看護ステーションには、創業当初から「理想の看護を、現実にする」ための明確なビジョンがありました。

【3つの柱】
1. 病院レベルの医療を在宅で届けること
2. リアルタイム情報共有(ビジネスチャットやカメラなど情報機器の活用)
3. 早期回復支援、サービス卒業(=利用終了)支援による医療費削減

患者さんがよくなるほど、看護師の仕事は減る。けど、“あそこに頼めば早くよくなる”と信頼されることが、一番のブランディングになるんです」と、代表はやわらかく笑います。

レッドオーシャンでも負けなかった理由

訪問看護の業界は、近年急激に事業者が増加し、「1年以内に約40%が廃業・休業する」厳しい世界です。

そんな中、なないろはどうやって生き残ってきたのでしょうか?


【スモールスタート+地道な信頼構築】

始まりは小さな一歩でした。月5万円の事務所を借り、代表・妻・友人の3人だけでスタート。またステーション設立の9か月前から地域のNPOや包括支援センターでボランティア活動を重ね、ケアマネージャーや包括支援センター職員と「顔の見える関係」を築いてきました。

【特化分野と情報力で差別化】

なないろが選ばれる理由のひとつに、特定の疾患に特化した看護があります。
次の3つの疾患に得意なスタッフを集め、それぞれの疾患での困りごとに対し、きめ細やかなサービスを提供してきました。

・認知症:動き回る患者さんに対して、GPSタグ、AMAZONアレクサなどを活用し、徘徊を予防・見守り
・糖尿病:食事や生活習慣を見直し、透析予防を重視した看護
・神経難病:生活環境の整備や福祉用具の導入提案を含めたトータルサポート

このように、ただ「診療内容をこなす」のではなく、「生活の質をどう高めるか」という視点で看護を考えるのが、なないろの特徴です。

またDXを積極活用し、効率的な看護を実現しています。

医療関係者でのチャットツール「メディカルケアステーション」を地域の先駆けとなり導入

Amazonアレクサによる呼びかけ、見守り

GPS機能付きICタグにより認知症患者をフォロー

チームで支える文化と、看護のアップデート

なないろでは、「看護師一人で抱え込まない」文化を大切にしています。
・毎週ミーティングで悩みや提案を共有
・アセスメントツールで、患者の背景や家族の状況まで把握
・経験や知識を共有してチームで支える体制

これにより、大手事業者にありがちな「ただ行って処置して帰る看護」ではなく、患者の生活を整える“提案型の看護”を実現しています。

情報発信と、スタッフが辞めない理由

今ではX(旧Twitter)やInstagramで、日々の訪問看護の様子や、看護師の想いを発信。Instagramフォロワーは約4,000人おり、同業者や家族からの注目も高まっています。

さらに、スタッフが働きやすい環境づくりにも力を入れていています。

・利益の6割をボーナスに還元
・毎日のランチを代表が作り、スタッフと一緒に食べる
・「こういう看護がいいよ」と背中で見せる指導
・フラットな相談文化

この5年間で辞めたスタッフは2名のみ。離職率が高い看護業界において離職率を低く抑えられているのは、看護師が「ここで働きたい」と思える環境が整っているからです。

未来への展望

 「いい看護をしたい」、「看護をアップデートしていきたい」という想いを軸に、仲間と支え合いながら、一歩ずつ信頼を築き上げてきた5年間。現在のスタッフは6名ですが、さらに効率的な体制を目指して増員計画中。さらに、今後は訪問看護だけにとどまらず、高齢者の見守りサービスにも力を入れていく予定です。

代表はデジタル技術に明るく、アレクサやポータブルWi-Fiを使い、呼びかけるとテレビ電話が自動でつながるサービスや、スマホと連携したオートロックの設置など既に行っています。これらをさらに発展させ、ご家族やケアマネジャーにも共有し、「安心を届けるネットワーク」として広げていく構想です。。

川村 要一 <アドバイザー>

販売促進や営業活動支援が得意

製造業や外資系企業、サービス会社、不動産業など色々な会社で、営業支援や商品企画などを行い経験が豊富です。
どんな事業者にも強みがあります。強みを可視化し自社にあった営業スタイルでどう売上を伸ばしていくかを一緒に考えていきましょう。