新入社員教育にこそ使いたい「きれいなデータ」とは何かを教えるという投資


新入社員教育というと、ビジネスマナーや社内ルール、OJTを思い浮かべる経営者の方が多いでしょう。しかし、近年の業務環境を考えると、もう一つ必ず教えるべき基礎があります。それが、集計・分析・データ連携に利用可能な「きれいなデータ」を作る力です。
ここでいう「きれいなデータ」とは、人が見て分かるだけのものではありません。コンピュータが見て大小の比較ができる、並び替えができる、分類できる、正しく解釈できるといった、「機械が処理しやすいデータ」のことを指します。


見た目が整っていても「使えないExcelデータ」
多くの会社で日常的に使われているExcelで作成されたデータや表には、「機械が処理しやすいデータ」ではないものが数多く存在します。たとえば、次のような表です。

• 見出しセルを結合している
• 1つのセルに「東京都練馬区●●町○−○−○」のように、複数の情報(都道府県・市区町村・町域)が入っている
• 「4月1日」「R6.4.1」「2026/4/1」など、異なる表記ルールが混在している
• 全角数字と半角数字が混在している
• 空白行や「※」などの注釈が途中に挟まっている
• 「※確認中」「未定」「同上」といった、人には分かるが数値・分類として扱えない表記が用いられている

人間が読む分にはさほど問題がないように見えても、並び替えや集計、分析、システムとの連携を行おうとする場面では、これらは一転して「使えないデータ」になってしまいます。


なぜ「機械が処理しやすいデータ」でなければならないのか
「きれいなデータ」で作成すべき理由は大きく3つあります。

1つ目は、将来の再利用性です。
データは作った瞬間ではなく、後から集計・分析・転用されてこそ価値を持ちます。人が読むことだけを前提に作られたデータは、その場限りで役割を終えてしまいます。

2つ目は、属人化の防止です。
「この表は○○さんに聞かないと分からない」という状態は、業務リスクそのものです。機械判読可能な形で作られたデータは、引き継ぎや自動化に強くなります。

3つ目は、デジタル活用への布石です。
今後、会計ソフト、RPA、生成AIなどと連携する場面は確実に増えていきます。その際に足を引っ張るのが、紙に印刷したときのレイアウトや体裁を優先した帳票形式のExcelデータ、いわゆる「Excel方眼紙」と呼ばれるものです。


総務省ルールが教えてくれる「きれいなデータ」を使った新入社員教育
総務省では、「機械判読可能なデータの表記方法の統一ルール」を公表しています。実はこのルールは、中小企業の新入社員教育にとっても非常に参考になる内容です。

総務省|報道資料|統計表における機械判読可能なデータの表記方法の統一ルールの策定

おすすめなのは、「Excelの操作方法」として教えるのではなく、
「なぜこの書き方ではうまくいかないのか」を考えさせることです。
たとえば、次のような流れです。

① 利用可能ではない表を見せ、グラフ作成や集計、並び替え、グループ分けをさせてみる
② なぜ集計や検索がうまくできないのかを考えさせる
③ 総務省ルールに沿ってデータを書き直させる
④ 書き直したデータを用いて、再度グラフ作成や集計、並び替え、グループ分けを行わせる

この流れだけで、Excelの扱い方、業務理解、データに対する考え方を同時に身につけさせることができます。

将来にわたって会社の中に扱いやすいデータが蓄積されていくことは、立派な「投資」です。
DXが進まない理由は、ツールではなく「データの作り方」にあることが少なくありません。その第一歩として、総務省のルールを活用した教育は、コストをかけずに効果が期待できる取り組みです。

新入社員が最初に作るExcel表から、会社の未来はすでに始まっています。

《 高島 慎一郎 /中小企業診断士 》