季節需要の力を活かした、EC売上アップの秘訣!
ネットショップを運営されている皆様、季節需要って上手く取り込めていますか?季節の様々なイベントに伴って発生する季節需要は、消費者の購買意欲を大きく高めてくれる有り難い存在。その力を借りて売上を伸ばす手法は、ECサイトを運営する上で重要な考え方となります。
そこで今回は、EC市場で特に盛り上がる3つの季節需要について、売上を伸ばすための具体的なテクニックをまとめてみました。ネットショップをまだまだ成長させたいという方は、ぜひ参考にしてみてください!
大盛り上がりの年末商戦、12月の季節需要
12月の傾向
年越しとお正月を間近に控え、冬のボーナスが出るタイミングとも重なる12月。消費者はたくさんのモノを購入し、ついつい財布の紐がゆるくなる時期です。多くのお客さんで賑わう市場は年末の風物詩ですが、ECでもそのような状態になっていると考えてよいでしょう。以下のグラフは、某事業者様の月次売上推移をグラフ化した一例です。
年間で一番の繁忙期が12月という事業者様も実際に多く、年末商戦は間違いなく大チャンスのはずです。このような年末需要をしっかりつかんで見逃さないため、売り方のコツについて以下で解説していきます。
クリスマスギフト
12月のギフトと言えばクリスマスです。そこでクリスマス限定のラッピングサービスや、メッセージカードをオプションとして用意すると、転換率(お客様が買ってくれる確率)を高めることができます。サンタやクリスマスツリーを模したデザインがあればベストですが、「Merry Christmas」などと一言入れるだけでも効果はあります。
対象となるギフト商品が複数ある場合は、ギフト専用の特集ページを設置して、ギフトに力を入れていることをアピールしましょう。さらに特集ページの中でも細分化し、「恋人へのプレゼント」「子どもへのプレゼント」「家族へのプレゼント」などで分けておくと、お客様にとって目的の商品を見つけやすくなるためオススメです。
また「クリスマスまでに配送が間に合うか」という点は、お客様にとって購入の重要な決め手となります。そこで「クリスマス配送スケジュール」をページ内で明確に掲示し、きちんと間に合うことをアピールしましょう。なお12月は物流が急増し、宅配便の遅延やトラブルが発生しやすいため、余裕を持ったスケジュールにしておくのが望ましいです。
まとめ買い
親戚や友人と集まる機会が増える年末年始には、「シェア用パック」や「パーティー用セット」など、まとめ買いを促すような販売方法が有効となります。こういったまとめ買いセットを販売する際には、テーマに合わせて用途を解説すると共に、割引やオマケなどといった特典をつけておくことがポイントです。
お客様がまとまった量を求めているのであれば、1個売りの商品をたくさん買えばよいかもしれません。ここでネットショッピングに慣れたお客様は、「まとめ買いすれば何か特典があるかも…?」という発想が頭に浮かんできます。何らかの特典がページに見つからない場合は、他の店舗にお得なセット販売が無いか探しに行ってしまい、二度と戻って来ないかもしれません。
さらにEC上級者のお客様にもなると、最初から特典ありのお得なセットしか探さない、なんて可能性も十分あります。ECはとても簡単に比較検討ができるため、競合の存在は常に意識しておかなければいけません。以上のような点から、まとめ買いセットには少しでも特典を用意して、精一杯のお買い得感を演出するとよいでしょう。
福袋
日本人は福袋が大好きです。お正月に大型ショッピングモールに行くと、多くのお店で福袋が販売されていますよね。リアル店舗と同様に、ECでも福袋は大人気で、年末年始にとてつもない金額を売り上げる店舗も多いです。
ECでの福袋の売り方としては、1月1日から販売開始にしてもよいのですが、ちょっとだけフライングして、12月末から販売してしまうことがオススメです。というのも「お正月に福袋を開けたい!」と考えるお客様がいるので、元日に手元に届いているという選択肢があるとベストなのです。ただし福袋が一番売れるのは1月1日なので、もし12月中に売り切れそうなほど好評であれば、十分な量を追加補充しておきましょう。
そして福袋というのは、在庫処分の大チャンスでもあります。売上獲得に加えて在庫の効率化にも寄与する、というのが福袋の素晴らしいところなので、このメリットも十分に活用したいところです。ただし店舗側の都合だけを考え過ぎてしまうと、一年の初めからお客様の信頼を失うことになりかねません。回転率の悪い商品をうまく組み合わせることで、損したと思われない福袋を作るよう心がけましょう。
様々な需要が入り乱れる、3月の季節需要
3月の傾向
仕事もプライベートも節目の時期となる3月は、やはり消費行動が活発になる時期です。新生活や引っ越し、入学・入園、就職・転職など、いずれも多くの準備が必要になるため、消費者はたくさんのモノをECで購入します。
特に需要の高まるジャンルとしては、家具や家電といった耐久消費財、文房具・オフィス用品、ビジネスウェアとその関連商品などが挙げられます。これらは後述するように、ギフト用としても利用できるオプションがあると望ましいです。その他にも花粉症対策商品や、春物ファッションなどの売上も期待できる時期であり、どのジャンルに力を入れようか迷ってしまうかもしれませんね。
入学・卒業・就職・退職
どれも似ているようで異なる需要となるため、それぞれのテーマを明確に分けた特集ページを作ることが望ましいです。特集ページ全体に共通するテーマとして、一番売りたいおすすめ商品を目立たせつつ、関連商品がすぐに見つかるわかりやすい構造にしましょう。
入学や就職といったイベントでは、準備するモノがいろいろあります。そこで関連商品を特集ページになるべく集めて、目的以外のモノも一緒に買ってしまう「ついで買い」を促すとよいでしょう。例えば「新社会人応援フェア」などというページを作って、ワイシャツ、ネクタイ、ベルトといった関連商品を豊富に揃える、といった具合です。こうすることで、1注文あたりの単価アップも狙うことができます。
卒業や退職といったイベントについては、どちらかというとギフト商戦の色合いが強いです。例えば「お世話になったあの人に贈るギフト特集」など、適切なテーマを冠した特集ページを設置しましょう。
新生活
3月は一人暮らしや転勤など、新しい家での新生活という需要も大きい時期です。引っ越しの時ほど様々な買い物をすることは、人生でそう多くないことでしょう。私も何度か引っ越しを経験していますが、必要なモノがあまりに多すぎて、買い物をするのがイヤになってしまいました…。そんな状況で大活躍するのがネットショップ、外に出ずとも家に届けてくれる仕組みが、お客様にとって救いの手となるわけです。
例えば「キッチン用品セット」や「収納ボックス○個セット」など、どの家庭でも共通する需要がある商品は、まとめ買いセットという選択肢を用意することがおすすめ。いちいち自分で選ぶ手間を省けるため、買い物疲れしたお客様に有効な施策です。さらにページのどこかにチェックリストを掲載し、買い忘れがないかを見てもらうように工夫すると、セットと一緒に他の商品も買ってくれるかもしれません。
また引っ越しにおいては、家具や家電といった高額商品の需要も高まります。こういった商品は、購入の際にレビューがとりわけ重視される傾向にあるため、普段から総合評価を高水準に保つように注意が必要です。
在庫処分&決算セール
3月は決算期ということで、「決算セール」や「在庫一掃セール」といった訴求が展開されています。お客様は値引きが大好きなので、このような訴求が絶大な効果を発揮します。インパクトの強いバナーを用意し、店内のいたる所に設置して導線を張り、「今だけお買い得」であることを強力に訴求するセールを実施しましょう。
こういった年度末セールで売上を上げるコツとしては、変にケチったりしないことです。ECでは価格の比較が容易なため、お客様は本当にお買い得であるかどうかを簡単に見抜きます。また常連のお客様ほど、セール時の「いつもの値下げ幅」を把握している方も多いです。どうせ決算セールと謳うのであれば、実際に滞留在庫の処分も兼ねて、普段はできないような価格をつけてみてもよいでしょう。
運営方針として値引きを控えている事業者様は、派手にセールをすることに抵抗があると思います。そうであれば無理に勧めるわけではないのですが、「決算時期だけは特別」であることをひときわ強調して、試験的に実施してみるのも一考です。終売商品だけの「在庫処分」という名目であれば、ブランドイメージに傷がつくことも防げるのではないでしょうか。
母の日と父の日がアツイ、5~6月の季節需要
5〜6月の傾向
母の日・父の日があるこの時期は、ECでギフト商戦が非常に盛り上がる時期です。夏モノ商品も売れてきますが、ギフト商品の売れ行きは凄まじい勢いがあります。
母の日・父の日で売上を伸ばすコツとしては、適したラッピング等のオプションを用意するというのも有効な施策です。しかし商品そのものがとりわけ重要であり、母の日・父の日に適しているモノかどうかが、売れ行きに直結する大きなポイントになります。以下で具体的なところを見ていきましょう。
母の日の商材と売り方のコツ
出典:母の日.me 【2023年度 母の日後】プレゼントを贈った方・もらった方へのアンケート調査
https://hahanohi.me/survey050/
消費者が母の日に贈った商品のアンケート結果を見てみると、お花、食品、スイーツで約7割を占めています。実際のECの売れ行きを見ていても、これらのジャンルは母の日ギフトとの相性が非常に良いことがわかります。有名ECモールでこの時期の売れ筋ランキングを見てみると、カーネーションやスイーツが上位を占めている日が多いです。
「お花も食品もウチでは取り扱ってない…」なんてガッカリした方、あきらめるのはまだ早いです!例えば自分のお店の商品とドライフラワーをセットにして、この時期だけの母の日ギフトを限定販売する、なんて形で展開してみてはいかがでしょうか?免許不要で扱える食品も多いので、花だけでなくスイーツとのセットも実現できるかもしれないですよ。
なおカレンダーの配置上で直前期間にあたることもあり、母の日ギフト商戦が最も盛り上がるのはゴールデンウィークです。その一方で、4月上旬頃からも少しずつ売れてきますので、数か月前から余裕を持って準備しておくことをおすすめします。
父の日の商材と売り方のコツ
出典:父の日.jp 【2023年度 父の日後】プレゼントを贈った方・もらった方へのアンケート調査
https://chichinohi.jp/survey062/
同じく父の日のランキングを見てみると、お酒と食品で6割を占めるという結果となりました。実際にECを運営していて感じるのが、父の日商戦でのビールの強さです。焼酎や日本酒も悪くないのですが、ビールギフトの売れ行きはもう一段階上を行っています。
普段ビールを扱っていない場合は、母の日同様に今だけのギフトセットを作りたいところですが…残念ながらお酒を扱うには酒販免許が必要です。そこで父の日商戦では、ハンカチや財布といった定番品をセットにしつつ、ギフトオプションに注力したセットを準備してみましょう。「お父さんいつもありがとう」など、ちょっとしたメッセージカードがあるだけで、売れ行きが大きく変わったりする例もあります。
父の日は6月の第3日曜日となります。最も需要が高まる期間としては、前の週の土日あたりから父の日直前までの期間ですね。とはいえそれ以前にも注文は入りますし、早いお客様は5月から注文するので、母の日商戦が終わったタイミングで間髪入れず販促を切り替えましょう。
季節需要も平常時の積み重ねが大切です
これまで見てきたように、季節需要は様々なビジネスにとって大きなチャンスとなります。しかし季節需要のタイミングだけネットショップに力を入れても、なかなか期待した成果は得られません。
例えばレビューの評価が悪かったり、ページ全体が使いづらかったりすると、せっかく来てくれたお客さんが何も買わず帰ってしまうかも。普段から適切にネットショップを運営し、サービスを充実させ、商品ページや販売環境を整えておくことで、季節需要の効果を最大限に活かすことができるのです。
また季節需要には多様な種類がありますが、商材によってその需要の特徴が異なることも多いです。商材の特性を踏まえ、ターゲット顧客のニーズの本質を理解しながら、季節ごとに効果的な訴求を行うよう心がけていきましょう。
塩島慎一朗 <中小企業診断士/ECコンサルタント>
経営全般を視野に入れたEC&WEBマーケティング支援
ネットショップ運営事業者を中心に、中小企業の支援を100社以上経験。
EC・WEBマーケティング関連の「攻略法」だけにとどまらず、財務面や組織面といった要素も考慮し、経営全般を視野に入れた相談に対応しています。