新型コロナウイルスと解雇

新型コロナウイルスに関連して従業員を大量解雇した会社が話題となっています。

雇用されたまま休業手当を受け取るよりは失業給付を受給した方が有利であり、感染拡大の影響が収束すれば希望者全員を再雇用するとのことのようです。

その手があったか!と感じた事業主の皆さんも多かったのではないでしょうか。

たしかに、会社にとって休業手当は負担になりますし雇用調整助成金の手続もよく分かりません。従業員にとっても感染リスクを抱えて業務に就くよりはマシですし、再雇用も約束されて良いことずくめのように聞こえます。

考えなければならない点を挙げてみました。

《解雇予告》

解雇する場合、労基署長の認定を受けた場合を除き、解雇日の30日以上前に解雇予告するか解雇予告手当を支払い予告日数の短縮をする必要があります。つまり、解雇を決断しても最低1か月分の賃金は負担しなければならないということです。

《整理解雇4要件》

整理解雇する場合には、①人員整理の必要性、②解雇回避の努力、③従業員への説明など整理手続の妥当性、④整理対象者選定の合理性、が必要です。

 解雇とは最終手段です。どうしようもない事情や努力を尽くした結果やむを得ない場合に、きちんと手続を踏むことが要求されます。

 突然通告して「この承諾書にハンコ押して」はダメです。

《失業給付の受給要件》

雇用保険法の失業とは求職しても職に就けない状態のことです。

再雇用が約束されている場合は果たして失業といえるのか。今は再雇用できず他社への就職も構わないという程度の約束であれば、問題ないのでしょうか。失業給付を受給した後、結果として約束どおりに再雇用された場合、失業給付の受給に違法性はないのか。

さまざまな意見がありますが、国の方針は雇用調整助成金の拡充から考えても雇用維持を重視していることは明らかです。

今は我慢の時です。助成金や融資制度など様々な施策が打ち出されています。不満があるのは皆一緒です。ありがたく利用させてもらい頑張って乗り越えていきましょう。

《 馬場 一成 / 特定社会保険労務士 》